【プロ講師解説】このページでは『セッケン/合成洗剤の構造・違い・製法・性質・欠点など』について解説しています。解説は高校化学・化学基礎を扱うウェブメディア『化学のグルメ』を通じて6年間大学受験に携わるプロの化学講師が執筆します。


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セッケンとは

高級脂肪酸のナトリウム塩をセッケンという。セッケンは親油性(疎水性)の長い鎖状の炭化水素基の部分と、親水性のカルボキシ基のNa塩の部分からできている。

セッケンのように親油性の部分と親水性の部分を持つものを両親媒性の物質という。

セッケンの製法

けん化法

原料油脂を計算量の水酸化ナトリウムにより直接けん化し、塩析によってグリセリンとセッケンを分離する。(セッケンを得る)

中和法

原料油脂をあらかじめ加水分解して脂肪酸を作り、グリセリンを回収した後、脂肪酸を中和する。

セッケンの性質

ミセルコロイド

セッケン中では、セッケン粒子が多数会合してミセルと呼ばれる集合体を作り、水中に分散する。ミセルはコロイド粒子の大きさを持つためミセルコロイドとも呼ばれ、光を散乱して水溶液はやや白く濁っている。このとき、セッケン粒子は親油性の部分を外側(水中)に向けて会合している。

界面活性作用

親水基と疎水基の両方をもつ物質は水分子同士の水素結合を切断し、水の表面張力を低下させる。この作用を界面活性作用といい、界面活性作用を示す物質を界面活性剤という。

界面活性作用により泡立ちが良くなり、繊維に対する浸透性が向上する。また、セッケン水の表面で、セッケン粒子は親水基を水側に、疎水基を空気側に向けている。

乳化作用

セッケンは水に溶けにくい油などの汚れを疎水基の集中したミセルの内側に取り込んで、水中に分散させる。これを乳化作用という。このようにしてできたコロイド粒子は当然セッケンだけの状態よりも大きいので、光より多く散乱して溶液全体が白く濁ったようになり、乳濁液と呼ばれる。

セッケンの欠点

タンパク質からなる繊維には使えない

セッケンは弱酸と強塩基からなる塩なので、水中で加水分解して弱塩基性を示す。絹や羊毛などのタンパク質からなる繊維などには(加水分解して痛めてしまうため)使うことができない。

\[
R-COO^{-} + H_{2}O ⇄ R-COOH + OH^{-}
\]

硬水中では使えない

硬水(Ca2+やMg2+などを多く含む水)中では、以下の反応が起こって沈殿が生成し、洗浄作用が低下する。

\[
R-COO^{-} + Ca^{2+} ⇄ Ca(R-COO)_{2}\\
R-COO^{-} + Mg^{2+} ⇄ Mg(R-COO)_{2}
\]

合成洗剤とは

強酸であるスルホン酸R-SO3Hのナトリウム塩を合成洗剤という。
強酸と強塩基からなる塩なので、加水分解せずに中性を示す。

硫酸アルキルナトリウム(高級アルコール系)

アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム(ABS)

セッケン/合成洗剤の違い

水溶液の液性 硬水との反応 生分解性
セッケン
(R-COONa)
弱塩基性 沈殿する されやすい
合成洗剤
(R-SO3Na)
中性 沈殿しない されにくい

セッケンは高級脂肪酸のナトリウム塩(R-COONa)であり、水溶液の液性は弱塩基性、硬水と反応して沈殿を作る。合成洗剤はスルホン酸のナトリウム塩(R-SO3Na)であり、水溶液の液性は中性、硬水と反応しない。

天然に存在する脂肪酸のナトリウム塩であるセッケンは、海や川などの自然環境に戻しても微生物が持つ酵素により分解されやすい。これを生分解性が高いという。生分解性が高いということはつまり、自然環境に対する影響が小さい。また、タンパク質変性作用が少ないので手荒れなども起こりにくい。一方、人工的に作った合成洗剤は、生分解性が低いため水質汚染の原因になりやすく、またタンパク変性作用が大きいため手荒れが起こりやすい。

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著者プロフィール

・化学のグルメ運営代表
・高校化学講師
・薬剤師
・デザイナー/イラストレーター

数百名の個別指導経験あり(過去生徒合格実績:東京大・京都大・東工大・東北大・筑波大・千葉大・早稲田大・慶應義塾大・東京理科大・上智大・明治大など)
2014年よりwebメディア『化学のグルメ』を運営
公式オンラインストアで販売中の理論化学ドリルシリーズ・有機化学ドリル等を執筆

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