【プロ講師解説】このページでは『有機化合物の定義や特徴、性質など』について解説しています。解説は高校化学・化学基礎を扱うウェブメディア『化学のグルメ』を通じて6年間大学受験に携わるプロの化学講師が執筆します。
有機化合物とは
炭素C原子を含む化合物を有機化合物という。
ただし、以下の化合物は例外的に無機化合物である。
【炭酸塩・炭酸水素塩】
- 一酸化炭素CO
- 二酸化炭素CO2
- 炭酸カルシウムCaCO3
- 炭酸水素ナトリウムNaHCO3
【シアン化合物】
- シアン化水素HCN
- シアン化カリウムKCN
有機化合物の特徴
炭素原子を骨格とする
有機化合物は炭素によって分子の骨格が形成されている。
炭素の原子価は4なので、最外殻に存在する4つの不対電子を用いて、他の原子と共有結合を形成する。
炭素原子は共有結合によって連続的につながることが可能であり、二重結合や三重結合を作ることができる。
さらには水素H、酸素O、窒素N、硫黄S、塩素Clなどの原子と共有結合をすることによって、様々な分子を作る。
構成元素の種類が少ない
炭素C以外の有機化合物の構成元素は、水素H、酸素O、窒素N、硫黄S、ハロゲンなどに限られ、無機化合物と比較して構成元素の種類が少ない。
有機化合物の多くは、これら少数の非金属元素から構成された分子である。
化合物の種類が多い
現在知られている物質は約5000万種類だが、そのうちの9割以上は有機化合物で、無機化合物と比較して種類が非常に多い。
これは、炭素原子同士が数多くつながることや、炭素原子が多様な結合を作るためである。
有機化合物の性質
融点・沸点が低い
有機化合物はほとんどが分子である。
固体同士では、分子同士が弱い分子間力で繋がっているだけなので、温度を上げると容易に分子間力による結合が切れ、液体を経て、気体になる。
また、固体が液体を経ないで気体になる(昇華する)場合もある。
※物質の状態変化について詳しくは【物質の三態】状態変化とは?原理や用語(凝縮・昇華等)を図を使って解説!を参照
燃えるものが多い
有機化合物を空気中で加熱すると、燃焼するものが多く、そのとき発生する燃焼熱も大きい。
そのため灯油、ガソリン、天然ガス、アルコールなど、燃料の多くは有機化合物である。
有機化合物が完全燃焼すると、構成元素のうち、炭素Cは二酸化炭素CO2に、水素Hは水H2Oになる。
大気中の二酸化炭素の割合が増加する主な原因は、有機化合物の燃焼によるものだとされている。
水に溶けにくく、有機溶媒に溶けやすい
有機化合物の構造は、C原子の骨格にH原子が結合したものが大部分である。
C-C結合には極性がなく、C-H結合もCとHの電気陰性度の差が小さいので極性は小さい。
したがって、有機化合物の分子には極性がほとんどなく、水に溶けにくく、エーテルなどの有機溶媒に溶けやすい。
例外的に水に溶けても、電離してイオンになることは少なく、多くは分子のままで溶けている。
すなわち、水溶液が電気を通さない非電解質が多い。
反応速度が小さい
燃焼のような高温での反応を除けば、有機化合物の反応速度は小さい。
これは、有機化合物の反応は共有結合の切断を必要とするため、活性化エネルギーが大きいからである。
有機化合物に関する演習問題
炭素C原子を含む化合物の総称を【1】という。
有機物の構成元素は炭素の他、水素、酸素、窒素、ハロゲンなどで、無機物と比べると構成元素の数は【1(多or少な)】い。
有機物は炭素原子同士が共有結合して鎖状や環状など様々な形になるため、化合物の種類は非常に【1(多or少な)】い。
有機物は分子からなるものが多く、融点・沸点は【1(高or低)】い。
有機物が完全燃焼すると、【1】と【2】が生成する。
有機物は【1(水or有機溶媒)】に溶けにくく、【2(水or有機溶媒)】に溶けやすいものが多い。
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・化学のグルメ運営代表
・高校化学講師
・薬剤師
・デザイナー/イラストレーター
数百名の個別指導経験あり(過去生徒合格実績:東京大・京都大・東工大・東北大・筑波大・千葉大・早稲田大・慶應義塾大・東京理科大・上智大・明治大など)
2014年よりwebメディア『化学のグルメ』を運営
公式オンラインストアで販売中の理論化学ドリルシリーズ・有機化学ドリル等を執筆
著者紹介詳細