電子配置(書き方・例題・電子を並べる順番やルール・覚え方など)

目次

はじめに

【プロ講師解説】このページでは『電子配置(書き方・例題・電子を並べる順番やルール・覚え方など)』について解説しています。


電子殻とは

  • 原子の中心には原子核が、そのまわりには電子が存在する。
  • このとき、電子の存在する場所(次図の黒い円)を電子殻という。

参考:【原子の構造】陽子・中性子・電子・原子核・質量数・原子番号の数と関係

  • 電子殻は層になっており、内側から順にK殻、L殻、M殻、N殻という。

この表し方はデンマーク人のボーアが考えたもので、ボーアモデルとよばれます。

  • それぞれの電子殻に入れることのできる電子の数は決まっている。内側からn番目の殻の最大収容電子数は2n2である。
スクロールできます
n1234n
電子殻K殻L殻M殻N殻
最大収容電子数2818322n2

テストのとき毎回一般式から考えると時間がないので、N殻までの最大収容電子数は暗記しておきましょう。


電子配置のルール

  • 電子は次のルールにしたがって、電子殻に配置される。

●ルール1
内側の殻から順に入る
●ルール2
最外殻(最も外側の殻)の電子は8個まで

参考:最外殻電子と価電子(違い・一覧・8個の理由など)

  • 以降、具体例をあげながら、電子配置のルールを確認する。

1H・2Heの電子配置

  • 1H・2He(第1周期の元素)の電子配置は次の通りである。
元素K殻電子配置
1H1
2He2
  • ルール1より、電子は内側のK殻から順に入る。1H・2Heでは、K殻に全ての電子が収まっている。
  • 2Heでは、K殻が最大収容電子数(2個)に達している。このように、最外殻が満たされた状態を閉殻という。

3Li~10Neの電子配置

  • 3Li~10Ne(第2周期の元素)の電子配置は次の通りである。
元素K殻L殻電子配置
3Li21
4Be22
5B23
6C24
7N25
8O26
9F27
10Ne28
  • 3Li~10Neでは、L殻に電子が収まっていく。
  • 10Neは最外殻であるL殻が満たされており、閉殻である。

11Na~18Arの電子配置

  • 11Na~18Ar(第3周期の元素)の電子配置は次の通りである。
スクロールできます
元素K殻L殻M殻電子配置
11Na281
12Mg282
13Al283
14Si284
15P285
16S286
17Cl287
18Ar288
  • 11Na~18Arでは、M殻に電子が収まっていく。

第3周期までの電子配置は全員必ず書けるようにしておきましょう。


19K・20Caの電子配置

  • 19K・20Caの電子配置は次の通りである。
元素K殻L殻M殻N殻
19K2881
20Ca2882
  • ルール2より、最外殻の電子は8個までであり、現段階でM殻にこれ以上の電子を入れることはできない。したがって、19K・20Caでは、N殻に電子が収まっていく。

21Sc~30Znの電子配置

  • 21Sc~30Znの電子配置は次の通りである。
元素K殻L殻M殻N殻
21Sc2892
22Ti28102
23V28112
24Cr28131
25Mn28132
26Fe28142
27Co28152
28Ni28162
29Cu28181
30Zn28182
  • 21Sc~30Znでは、M殻に電子が収まっていく(N殻が最外殻になったので、M殻に9個以上の電子を入れることができるイメージ)。
  • 30Znは最外殻であるM殻が満たされており、閉殻である。
  • 24Crと29Cuでは、M殻に1個の電子が収まるのに加えて、N殻から1個の電子がM殻に移動する。

このあたりの電子配置を正確に理解するには、電子軌道の学習が必要です。本ページ下部で解説しますが、大学受験の範囲外です。


31Ga~36Krの電子配置

  • 31Ga~36Krの電子配置は次の通りである。
元素K殻L殻M殻N殻
31Ga28183
32Ge28184
33As28185
34Se28186
35Br28187
36Kr28188
  • 31Ga~36Krでは、N殻に電子が収まっていく。

電子軌道とは

  • 電子殻は、電子を2個まで収容できる副殻から構成される。

参考:電子式(書き方・ルール・一覧・演習問題など)

  • K殻は1個、L殻は4個、内側からn番目の殻はn2個の副殻からできている。
  • 副殻は電子軌道ともいう。
  • 1個の電子軌道には自転方向の異なる電子を2個まで収容できる。

例えばL殻は4個の副殻からできており、(1個の副殻に収容できる電子の数は2個までなので、)全体で8個の電子を収容できます。

  • K殻は、球形の1s軌道からなる。
  • 電子が1s軌道に収まる場合、この球のどこかに存在する可能性が高いと考える。
  • L殻は、やや大きい球形の2s軌道と、数字の8のような形の2p軌道(3つ)からなる。
  • 2p軌道は、x軸、y軸、z軸方向に3種類存在する。(それぞれ2px軌道、2py軌道、2pz軌道という)
  • M殻は、3s軌道、3p軌道(3つ)、複雑な形の3d軌道(5つ)からなる。
  • N殻は、4s軌道、4p軌道(3つ)、4d軌道(4つ)、さらに複雑な形の4f軌道(7つ)からなる。

電子軌道に基づいた電子配置

  • 電子軌道のエネルギーは、次の矢印の順に高くなる。
  • 電子軌道のエネルギーに基づいた電子配置を紹介する。

1H~2Heの電子配置

元素1s
1H
2He↑↓

3Li~10Neの電子配置

スクロールできます
元素1s2s2p2p2p
3Li↑↓
4Be↑↓↑↓
5B↑↓↑↓
6C↑↓↑↓
7N↑↓↑↓
8O↑↓↑↓↑↓
9F↑↓↑↓↑↓↑↓
10Ne↑↓↑↓↑↓↑↓↑↓
  • 同じ軌道に電子が入る場合、できる限り分散して入ることに注意が必要である。
  • 例えば6Cにおいて、2p軌道に2つの電子が入るとき、異なる2p軌道に1つずつ入る。

11Na~18Arの電子配置

スクロールできます
元素1s2s2p2p2p3s3p3p3p
11Na↑↓↑↓↑↓↑↓↑↓
12Mg↑↓↑↓↑↓↑↓↑↓↑↓
13Al↑↓↑↓↑↓↑↓↑↓↑↓
14Si↑↓↑↓↑↓↑↓↑↓↑↓
15P↑↓↑↓↑↓↑↓↑↓↑↓
16S↑↓↑↓↑↓↑↓↑↓↑↓↑↓
17Cl↑↓↑↓↑↓↑↓↑↓↑↓↑↓↑↓
18Ar↑↓↑↓↑↓↑↓↑↓↑↓↑↓↑↓↑↓

19K・20Caの電子配置

スクロールできます
元素1s〜3p3d3d3d3d3d4s
19K↑↓
20Ca↑↓↑↓

21Sc~30Znの電子配置

スクロールできます
元素1s〜3p3d3d3d3d3d4s
21Sc↑↓↑↓
22Ti↑↓↑↓
23V↑↓↑↓
24Cr↑↓
25Mn↑↓↑↓
26Fe↑↓↑↓↑↓
27Co↑↓↑↓↑↓↑↓
28Ni↑↓↑↓↑↓↑↓↑↓
29Cu↑↓↑↓↑↓↑↓↑↓↑↓
30Zn↑↓↑↓↑↓↑↓↑↓↑↓↑↓
  • 24Cr、29Cuについて、d軌道は半分(5個)または全部(10個)満たされたときに安定化するため、N殻からM殻に電子が1つ移動している。

31Ga~36Krの電子配置

スクロールできます
元素1s〜4s4p4p4p
31Ga↑↓
32Ge↑↓
33As↑↓
34Se↑↓↑↓
35Br↑↓↑↓↑↓
36Kr↑↓↑↓↑↓↑↓

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著者情報

元講師、薬剤師、イラストレーター
数百名の中高生向け指導経験あり(過去生徒合格実績:東工大・東北大・筑波大・千葉大・岡山大・早稲田大・慶應義塾大・東京理科大・上智大・明治大など)。
2014年よりwebメディア『化学のグルメ』を運営
公式オンラインストアで販売中の理論化学ドリルシリーズ・有機化学ドリル等を執筆
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