【プロ講師解説】このページでは『炭酸ナトリウムNa2CO3の工業的製法「アンモニアソーダ法」(仕組みや覚え方など)』について反応式や図を用いて解説しています。解説は高校化学・化学基礎を扱うウェブメディア『化学のグルメ』を通じて6年間大学受験に携わるプロの化学講師が執筆します。
アンモニアソーダ法とは
塩化ナトリウムNaClや石灰石CaCO3を原料とした炭酸ナトリウムNa2CO3の工業的製法をアンモニアソーダ法といい、ベルギー人の化学者であるエルネスト・ソルベーが考えたことからソルベー法とも呼ばれる。
アンモニアソーダ法の仕組み
STEP1 | 石灰石CaCO3を熱分解する |
STEP2 | 生石灰CaOを水に溶かす |
STEP3 | 消石灰Ca(OH)2と塩化アンモニウムNH4Clを反応させる |
STEP4 | 塩化ナトリウムNaClの飽和水溶液にNH3、CO2を順に吹き込む |
STEP5 | 炭酸水素ナトリウムNaHCO3を熱分解する |
まずは、アンモニアソーダ法の仕組みについて上のSTEPを使って説明していこう。
STEP1
CaCO_{3} → CaO + CO_{2}
\]
CaCO3は炭酸塩の一種。
したがって、【熱分解反応】入試頻出3パターンの反応式の作り方などを解説にあるように、熱分解するとCO2と酸化物(ここではCaO)になる。
STEP2
CaO + H_{2}O → Ca(OH)_{2}
\]
CaOは金属元素が含まれる酸化物なので塩基性酸化物に分類される。
したがって、酸化物の反応(金属元素・非金属元素)にあるように、水と反応させると水酸化物ができる。
また、ここで水と反応させているCaOはSTEP1で作られたものだということも把握しておこう。
STEP3
Ca(OH)_{2} + 2NH_{4}Cl → CaCl_{2} + 2NH_{3} + 2H_{2}O
\]
Ca(OH)2は強塩基、NH4Clは弱塩基を含む塩なので弱塩基遊離反応が起こる。(弱塩基遊離反応について詳しくは【弱酸・弱塩基遊離反応】原理や公式、反応式の作り方などを参照)
また、ここで使われているCa(OH)2はSTEP2で、NH4ClはSTEP4で作られたものである。(STEP4で作られたものを使うのはおかしいと思うかも知れないが、実際は5つのSTEPはサイクルで連続して行われているため、前の回転のSTEP4で作られたものを使っていると考えればOK)
STEP4
NaCl + H_{2}O + NH_{3} + CO_{2} → NaHCO_{3} + NH_{4}Cl
\]
H2OとNH3はSTEP3で作られたもの。
STEP5
2NaHCO_{3} → Na_{2}CO_{3} + H_{2}O + CO_{2}
\]
NaHCO3は炭酸水素塩の1つ。
したがって、【熱分解反応】入試頻出3パターンの反応式の作り方などを解説にあるように、熱分解するとH2OとCO2と炭酸塩(ここではNa2CO3)になる。
全体の反応式
最後に、STEP1からSTEP5の反応を1つの式にまとめてみよう。
2NaCl + CaCO_{3} → Na_{2}CO_{3} + CaCl_{2}
\]
STEP1とSTEP4で使ったNaClとCaCO3が反応物、最終的にできる生成物はNa2CO3とCaCl2である。
各STEPで登場する他の物質は、できて、また使われてという風に5STEPの流れの中で生成と消失が完結してしまうので、全体の反応式には書く必要がない。
アンモニアソーダ法の図
最後に、アンモニアソーダ法の流れを図にしてまとめておこう。
一問一答
塩化ナトリウムNaClや石灰石CaCO3を原料とした炭酸ナトリウムNa2CO3の工業的製法を【1】といい、ベルギー人の化学者であるエルネスト・ソルベーが考えたことから【2】とも呼ばれる。
炭酸水素ナトリウムNaHCO3を熱分解するときの反応式を書け。
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・化学のグルメ運営代表
・高校化学講師
・薬剤師
・デザイナー/イラストレーター
数百名の個別指導経験あり(過去生徒合格実績:東京大・京都大・東工大・東北大・筑波大・千葉大・早稲田大・慶應義塾大・東京理科大・上智大・明治大など)
2014年よりwebメディア『化学のグルメ』を運営
公式オンラインストアで販売中の理論化学ドリルシリーズ・有機化学ドリル等を執筆
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