【プロ講師解説】このページでは『アルデヒド・ケトン(一覧・違い・命名法・製法・反応・性質など)』について解説しています。解説は高校化学・化学基礎を扱うウェブメディア『化学のグルメ』を通じて6年間大学受験に携わるプロの化学講師が執筆します。
アルデヒドとは
アルデヒドとはアルデヒド基(-CHO)をもつ化合物である。
アルデヒドの名称
示性式 | 慣用名 |
---|---|
H-CHO | ホルムアルデヒド |
CH3-CHO | アセトアルデヒド |
CH3-CH2-CHO | プロピオンアルデヒド |
アルデヒドは慣用名で呼ばれることがほとんど。慣用名と構造をきっちり対応させて覚えよう。
アルデヒドの製法
基本的な製法(第1級アルコールの酸化)



アルコール・エーテル(一覧・違い・命名法・製法・反応・性質など)でやったように、アルデヒドは第1級アルコールの酸化により得ることができる。
例として「エタノールの酸化によるアセトアルデヒドの生成反応」を確認しておこう。
アセトアルデヒドの工業的製法(エチレンの酸化)
アセトアルデヒドの工業的製法は入試でも頻出なので、一般的なアルデヒドの製法とは別枠で押さえておこう。
2CH_{2}=CH_{2} + O_{2} → 2CH_{3}-CHO
\]
アセトアルデヒドは、工業的には塩化パラジウム(Ⅱ)PdCl2と塩化銅(Ⅱ)CuCl2を触媒に用いて、エチレンを空気酸化して製造される。
この反応はヘキスト・ワッカー法と呼ばれている。
アルデヒドの性質
・水溶性
・還元性
沸点が高い
カルボニル基は比較的大きな極性をもち、同程度の分子量をもつアルカンよりもファンデルワールス力が大きいため、沸点は高くなる。
ただしヒドロキシ基のように分子間で水素結合を形成できないので、アルコールと比べると沸点は低くなる。
※アルカンについて詳しくはアルカン(一般式の作り方・一覧・命名法・製法・性質・置換反応など)を参照
※水素結合・ファンデルワールス力について詳しくは分子間力(水素結合・ファンデルワールス力・沸点のグラフなど)を参照
水溶性
アルデヒドは炭化水素部分が小されけば水に溶ける。
ホルムアルデヒド(HCHO)→ ホルマリン
\]
特に30%~40%程度のホルムアルデヒド水溶液はホルマリンと呼ばれ、防腐剤などとして用いられる。(解剖前のご遺体を保存しておくやつ)
還元性
アルデヒドは還元性があるため、フェーリング反応や銀鏡反応などの反応を起こす。
※フェーリング反応・銀鏡反応について詳しくは銀鏡反応とフェーリング反応(原理・反応式・沈殿・色変化など)を参照
アルデヒドの反応①(フェーリング反応)
フェーリング液には銅(Ⅱ)イオンCu2+が含まれている。
ここにアルデヒドを加えて加熱すると、アルデヒドの還元性によりCu2+は還元され、酸化銅(Ⅰ)Cu2Oの沈殿が生成する。(酸化銅(Ⅰ)中の銅イオンの酸化数は+1(Cu+)なので酸化数が減っている=還元されている)
この反応をフェーリング反応という。
また、アルデヒド自身は反対に酸化されカルボン酸となっているということも押さえておこう。
※フェーリング反応・銀鏡反応について詳しくは銀鏡反応とフェーリング反応(原理・反応式・沈殿・色変化など)を参照
※カルボン酸について詳しくはカルボン酸・エステル(一覧・構造・命名法・製法・反応・性質など)を参照
※酸化数について詳しくは酸化数(求め方・ルール・例外・例題・一覧・演習問題)を参照
アルデヒドの反応②(銀鏡反応)
アンモニア性硝酸銀水溶液には錯イオン[Ag(NH3)2]+が存在する。
ここにアルデヒドを加えて加熱するとアルデヒドによって銀イオンが還元され、単体の銀Agが生成する。(銀の単体の酸化数は0なので銀イオンの酸化数+1から還元されている)
生成した銀は金属特有の光沢を示すため試験管の中は鏡のような状態になり、これが反応名”銀鏡反応”の由来になっている。
また、フェーリング反応と同様にアルデヒド自身は酸化されてカルボン酸になるということも押さえておこう。
※フェーリング反応・銀鏡反応について詳しくは銀鏡反応とフェーリング反応(原理・反応式・沈殿・色変化など)を参照
※錯イオンについて詳しくは【錯イオン】色・配位数・形・価数・命名法を総まとめを参照
※カルボン酸について詳しくはカルボン酸・エステル(一覧・構造・命名法・製法・反応・性質など)を参照
※酸化数について詳しくは酸化数(求め方・ルール・例外・例題・一覧・演習問題)を参照
ケトン
ケトンとは、ケトン基(R-CO-R‘)をもつ化合物である。
アルデヒドとケトンはともにC=Oの結合をもつ化合物であり、これらを一括りにしてカルボニル化合物と呼ぶこともある。
ケトンの命名法
STEP1 | ケトン基の両サイドにある炭化水素基を確認する |
STEP2 | “ケトン”の前にアルファベットの若い順に官能基名をつける。また、2つの官能基が同じ場合は官能基名の前に”ジ”をつける |
今回は、次の化合物を例に説明していく。
STEP1
まずは、ケトン基の両サイドにある炭化水素基を確認する。
①は両側ともエチル基、②は左側はエチル基、右側はメチル基になっている。
STEP2
次に、”ケトン”の前にアルファベットの若い順に官能基名をつける。また、2つの官能基が同じ場合は官能基名の前に”ジ”をつける。
①は両側にエチル基が付いているので「ジエチルケトン」、②は左側にエチル基、右側にメチル基が付いているので「エチルメチルケトン」になる。
PLUS+
「ジメチルケトン」だけは例外として「アセトン」という慣用名で呼ばれるので覚えておこう。
ケトンの製法
・アルケンの酸化
・クメン法(アセトンのみ)
・酢酸カルシウムの乾留(アセトンのみ)
第2級アルコールの酸化



アルコール・エーテル(一覧・違い・命名法・製法・反応・性質など)にあるように、第2級アルコールを酸化することでケトンが生成する。
アルケンの酸化
アルケンを酸化すると2つのケトンが生成する。
クメン法(アセトンのみ)
クメン法はフェノールの製法として知られているが、フェノールと同時にケトンの一種であるジメチルケトン(=アセトン)が生成する。
※クメン法について詳しくはフェノール類(名称・製法・性質・反応など)を参照
酢酸カルシウムの乾留(アセトンのみ)
アセトンの実験室的製法として酢酸カルシウムの乾留が知られている。
ケトンの性質
ケトンは還元性がなくフェーリング反応や銀鏡反応を起こさない。
したがって、還元性を示すアルデヒドと区別が可能である。
ケトンの反応(ヨードホルム反応)
上のような構造を持つアルコールやケトンにヨウ素I2と水酸化ナトリウムNaOH水溶液を加えて温めると特有の臭いをもつ「ヨードホルムCHI3」という黄色沈殿が得られる。
この反応をヨードホルム反応と呼ぶ。
ちなみに、ヨードホルム反応において、反応する部分構造に隣接する原子はCかHでなければならない。
例えば、隣がOである酢酸はヨードホルム反応を起こさない。
また、ヨードホルム反応の原理をより詳しく説明すると以下のようになる。(受験には必要なし)
以下の構造はアセチル基と呼ばれる。
アセチル基内で、C-H結合が隣接するカルボニル基の影響で、塩基性条件下ではOH–によりH+が引き抜かれやすくなっている。
ここに、酸化剤(電子を奪うもの)であるI2分子が接近すると、次のような反応が起こる。
これをもう2回繰り返すと…
ここで、さらに正電荷を帯びたカルボニル基の炭素がOH–に攻撃されて、次のような分解が進む。
最終的にヨードホルムCHI3が生成しているのが確認できる。
アルデヒド・ケトンに関する演習問題
アルデヒド基-CHOをもつ化合物を【1】という。
示性式 | 慣用名 |
---|---|
H-CHO | 【1】 |
CH3-CHO | 【2】 |
CH3-CH2-CHO | 【3】 |
アルデヒドは第【1】級アルコールの酸化により得ることができる。
ホルムアルデヒドは水に溶けると【1】となる。
アルデヒドはフェーリング液(Cu2+を含む)を還元し、酸化銅(Ⅰ)Cu2Oの赤色沈殿が生成する。この反応を【1】という。
アルデヒドはアンモニア性硝酸銀水溶液([Ag(NH3)2]+を含む)を還元し単体の銀Agが析出する。この反応を【1】という。
ケトン基(R-CO-R‘)をもつ化合物を【1】という。
ケトンは第【1】級アルコールの酸化により得ることができる。
アルケンを酸化すると【1】分子のケトンが生成する。
クメン法はフェノールの製法として知られているが、フェノールと同時にケトンの一種である【1】が生成する。
アセトンの実験室的製法として【1】の乾留がある。
ケトンは【1(酸化or還元)】性がなく、フェーリング反応や銀鏡反応を示さない。
上のような構造をもつアルコールやケトンにヨウ素I2と水酸化ナトリウムNaOH水溶液を加えて温めると特有の臭いをもつ【1】という黄色沈殿が得られる。この反応を【2】という。
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・化学のグルメ運営代表
・高校化学講師
・薬剤師
・デザイナー/イラストレーター
数百名の個別指導経験あり(過去生徒合格実績:東京大・京都大・東工大・東北大・筑波大・千葉大・早稲田大・慶應義塾大・東京理科大・上智大・明治大など)
2014年よりwebメディア『化学のグルメ』を運営
公式オンラインストアで販売中の理論化学ドリルシリーズ・有機化学ドリル等を執筆
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