はじめに

錯イオンは入試超頻出事項の1つ。このページでは錯イオンの定義から立体構造、命名法などについて一から丁寧に解説していく。ぜひこの機会に錯イオンをマスターして他の受験生と差をつけよう!


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錯イオンとは

金属の陽イオン分子陰イオン配位結合することによってできたイオンを錯イオンという。

錯イオンにおいて、金属イオンに配位結合している分子やイオンのことを配位子、配位子の数を配位数という。

金属イオンと配位数

錯イオンの配位数は金属イオンの種類によって決まっている。以下に一覧で示すので必ず覚えておこう。

金属イオン 配位数
Ag+ 2
Zn2+ 4
Cu2+ 4
Al3+
Fe2+ 6
Fe3+ 6

錯イオンの配位数と立体構造

上で書いたように配位数は金属イオンによって決まっており、それによって錯イオンの立体構造も決定する。

配位数が2なら直線形、6なら正八面体となる。配位数が4の場合は正四面体形と正方形の2通りが考えられ、金属イオンがZn2+の場合は正四面体形、Cu2+なら正方形と覚えよう。

金属イオン 配位数
Ag+ 直線
Zn2+ 正四面体
Cu2+ 正方形
Al3+ 正八面体
Fe2+ 正八面体
Fe3+ 正八面体

錯イオンの命名法

STEP1 配位数をチェックする
STEP2 配位子をチェックする
STEP3 金属イオンをチェックする
STEP4 STEP1~STEP3でチェックしたものをまとめる
Point!

これ以降は錯イオンの名前をつける方法、つまり錯イオンの命名法について説明していこう。
ここではジアンミン銀(Ⅰ)イオン[Ag(NH3)2+を例にする。

STEP1

1:モノ 2:ジ
3:トリ 4:テトラ
5:ペンタ 6:ヘキサ
Point!

錯イオンの名称の先頭には「ギリシャ文字」の数詞が書かれている。

使う数詞は配位数を見て判断する。

今回の場合は、配位数が「2」なのでギリシャ文字で2を表す「ジ」を使う。

STEP2

NH3:アンミン OH:ヒドロキソ
CN:シアニド S2O32-:ビス
Point!

次は、錯イオンの名称の中で、配位子が関わっている部分をチェックしていこう。

今回の例では、NH3が配位子のため、錯イオンの名称の中にNH3を表す「アンミン」という言葉を入れる。

また、もし配位子がOHが配位子なら「ヒドロキソ」、CNなら「シアニド」、S2O32-なら「ビス」を付けるということも知っておこう。

STEP3

Ag+/Cu2+/Zn2+/Fe2+/Fe3+
Point!

次に、錯イオン中の金属イオンをチェックしよう。

錯イオンによく含まれる金属イオンは上の通り。
今回の例ではこの中の「銀(Ⅰ)イオン」が使われているね。

従って、名称にも「銀(Ⅰ)」を入れる。

STEP4

配位数+配位子名+金属+(酸)イオン
Point!

最後に、STEP1からSTEP3で得た情報を1つにまとめて錯イオンの名称を決定しよう。
上のポイントに書いたように、錯イオンの名称は「配位数+配位子名+金属+(酸)イオン」の順になる。

まずは、今回例として使っている錯イオン[Ag(NH3)2+についてSTEP1からSTEP3で得た情報をまとめてみる。

  • 配位数:2→ジ
  • 配位子名:NH3→アンミン
  • 金属イオン:Ag+
  • これらを「配位数+配位子名+金属+(酸)イオン」の順に並べると…

    ジアンミン銀(Ⅰ)イオン

    これが錯イオン[Ag(NH3)2]+の名称である。

    Plus+

    錯イオンが負電荷をもつ場合、イオンの前に「酸」を付ける必要がある。

    [Al(OH)4]:テトラヒドロキソアルミン酸イオン
    [Fe(CN)6]4-:ヘキサシアニド鉄(Ⅱ)酸イオン

    錯イオン形成反応

    錯イオン形成反応とは

    水溶液中での金属イオンは水分子H2Oが結合して水和されており、この状態はアクア錯イオンと呼ばれる。

    例えば硫酸銅(Ⅱ)水溶液中の銅(Ⅱ)イオンはテトラアクア銅(Ⅱ)イオン[Cu(H2O)4]2+となっている。

    ここで金属イオン(アクア錯イオン)が存在する水溶液に金属イオンと相性の良い物質を加えると、配位子が水からその物質に交換されて錯イオン形成反応が起こる。

    例えば銅(Ⅱ)イオンを含む水溶液にアンモニアNH3水を加えると、テトラアクア銅(Ⅱ)イオン[Cu(H2O)4]2+の配位子H2OがNH3に置き換わり、錯イオンであるテトラアンミン銅(Ⅱ)イオン[Cu(NH3)4]2+が生じる。

    \[
    Cu^{2+}+4NH_{3}→[Cu(NH_{3})_{4}]^{2+}
    \]

    錯イオン形成反応式の作り方

    STEP1 金属イオンを含む化合物に配位子を組み合わせる
    → イオン反応式を作成
    STEP2 イオン反応式に対となるイオンを足す
    → 化学反応式を作成
    Point!

    ここでは例として「水酸化銅(Ⅱ)Cu(OH)2+アンモニアNH3」の反応と「水酸化アルミニウムAl(OH)3+水酸化ナトリウムNaOH」の反応を見ていこうと思う。

    水酸化銅(Ⅱ)Cu(OH)2+アンモニアNH3

    STEP1

    金属イオンを含む化合物に配位子を組み合わせて、イオン反応式を作成する

    まずは、金属イオンを含む化合物Cu(OH)2と配位子NH3を組み合わせよう。

    Cu(OH)2に含まれるCu2+だけを配位子NH3と組み合わせて、OHは外によけておく。

    STEP2

    STEP1で作成したイオン反応式に対となるイオンを足し、化学反応式を作成する

    次は、STEP1で作成したイオン反応式の中にある”対となるイオン”を組み合わせて化学反応式を作る。

    水酸化アルミニウムAl(OH)3+水酸化ナトリウムNaOH

    STEP1

    金属イオンを含む化合物に配位子を組み合わせて、イオン反応式を作成する

    まずは、金属イオンを含む化合物Al(OH)3と配位子NaOH(の中のOH)を組み合わせよう。

    STEP2

    STEP1で作成したイオン反応式に対となるイオンを足し、化学反応式を作成する

    次に、NaOHの内STEP1で使用しなかったNa+をイオン反応式に組み合わせる。

    金属イオンと配位子の組み合わせ

    各金属イオンと相性のいい配位子は頭に入れておく必要がある。

    配位子 錯イオン(イオン式) 錯イオン(名称)
    NH3 [Ag(NH3)2]+ ジアンミン銀(Ⅰ)イオン
    [Zn(NH3)4]2+ テトラアンミン亜鉛(Ⅱ)イオン
    [Cu(NH3)4]2+ テトラアンミン銅(Ⅱ)イオン
    [Ni(NH3)6]2+ ヘキサアンミンニッケル(Ⅱ)イオン
    OH [Zn(OH)4]2- テトラヒドロキシド亜鉛(Ⅱ)酸イオン
    [Al(OH)4] テトラヒドロキシドアルミン酸イオン
    [Sn(OH)4]2- テトラヒドロキシドスズ(Ⅱ)酸イオン
    [Pb(OH)4]2- テトラヒドロキシド鉛(Ⅱ)酸イオン
    CN [Ag(CN)2] ジシアニド銀(Ⅰ)酸イオン
    [Fe(CN)6]4- ヘキサシアニド鉄(Ⅱ)酸イオン
    [Fe(CN)6]3- ヘキサシアニド鉄(Ⅲ)酸イオン
    S2O32- [Ag(S2O3)2]3- ビス(チオスルファト銀(Ⅰ)酸イオン)
    Plus+

    アンモニアNH3弱塩基なので大量に加えてもOHはそれほど大きくならない。したがって、OHを配位子とした錯イオンは形成されず、NH3を配位子とした錯イオンのみができることに注意しよう。

    錯イオン形成が絡んだ沈殿の溶解

    水に難溶なイオン結晶(水酸化物・硫化物・塩化物・硫酸・クロム酸・炭酸イオン)で述べたように、塩化銀AgClは水に難溶な塩であり、その飽和水溶液中では次のような溶解平衡が成り立っている。

    \[
    AgCl↓⇄Ag^{+}+Cl^{-}
    \]

    この水溶液にNH3を過剰に加えた場合、上の一覧で示したようにAg+とClは相性がいいため錯イオンを形成する。その結果、[Ag(NH3)2]+が増えるに従い銀イオン濃度[Ag+]が小さくなるためルシャトリエの原理により平衡が右に移動してAgClの沈殿が溶けていく。このように錯イオン形成反応によって沈殿を溶解することができる。

    錯イオン形成によって沈殿が溶解したことを表すイオン反応式の例を1つ紹介しよう。

    例)水酸化亜鉛(Ⅱ)Zn(OH)2+アンモニアNH3

    Zn2+とNH3は相性がいいため、錯イオンであるテトラアンミン亜鉛(Ⅱ)イオン[Zn(NH3)4]2+が形成されて(水に難溶なイオン結晶(水酸化物・硫化物・塩化物・硫酸・クロム酸・炭酸イオン)でやったように水に難溶なイオン結晶である)Zn(OH)2の沈殿が溶ける。

    \[
    Zn(OH)_{2}+4NH_{3}→[Zn(NH_{3})_{4}]^{2+}+2OH^{-}
    \]

    溶解を表すイオン反応式の場合は、上の錯イオン形成反応式の作成でやったように右辺の陽イオンと陰イオンをくっつけずに、陽イオン+陰イオンのままでOK。

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