【プロ講師解説】このページでは『純物質と混合物(定義・違い・見分け方・例など)』について解説しています。解説は高校化学・化学基礎を扱うウェブメディア『化学のグルメ』を通じて6年間大学受験に携わるプロの化学講師が執筆します。

はじめに

このページを読むと『純物質と混合物(定義・違い・見分け方・例など)』に関する以下の項目について学ぶことができます。

  • 純物質・混合物・単体・化合物などの物質の分類に関する基本用語について
  • 純物質と混合物の違いについて
  • 純物質と混合物の見分け方について
  • 純物質と混合物の具体例について
  • 純物質と混合物に関する問題演習

物質の分類

まずは物質の分類について、基礎的な用語を確認しておく。

上図のように、物質は大きく純物質混合物に分けることができる。また、純物質はさらに単体化合物に分かれる。

このように、物質は必ず純物質か混合物に分類される。それではここから、純物質と混合物について詳しく解説していく。

混合物とは

2種類以上の物質が混ざった物質
Point!

空気や海水、岩石など2種類以上の物質が混ざってできた物質を混合物という。

私たちの身の回りに存在する多くの物質は、何種類かの物質が混ざり合った混合物として存在している。例えば、空気は窒素や酸素、アルゴンなどの混合物であり、海水は水や塩化ナトリウム、塩化マグネシウムなどの混合物である。

混合物には空気や海水のように複数の物質が均一に混ざったものと、岩石のように不均一に混ざったものがある。(例えば花崗岩では岩石を構成する”石英”や”雲母”などが含まれる組成が部分によって異なる)

混合物は分離法まとめ(ろ過・蒸留・分留・再結晶・抽出・昇華法・クロマトグラフィー)で紹介しているろ過・蒸留・分留・クロマトグラフィーなどの分離法で複数の純物質に分けることができる。

純物質とは

1種類の物質からなる物質
Point!

一種類の物質からなる物質を純物質という。

例えば、酸素(O2)、窒素(N2)、水(H2O)、塩化ナトリウム(NaCl)などが純物質に当たる。

純物質はそれ以上分けることができない物質である。したがって、混合物のように分離法を使って分離を行うことはできない。

また、純物質のうち1種類の元素のみで構成されている物質(O2 , N2など)を単体という。一方、純物質のうち2種類以上の元素で構成されている物質(H2O , NaClなど)を化合物という。

※単体・化合物について詳しくは単体と化合物(定義・違い・見分け方・一覧など)を参照

次に、純物質と混合物の違いについてまとめます。

純物質と混合物の違い

純物質 1種類の物質からなる
ex)酸素・窒素・水・エタノール
混合物 2種類以上の物質からなる
ex)空気・海水・石油
Point!

入試では純物質と混合物を見分ける問題がよく出題される。見分け方を学ぶ前に、純物質と混合物の違いについて今一度確認しておこう。

空気や海水、石油など2種類以上の物質が混ざってできた物質を混合物という。一方、酸素や窒素、水、エタノールなど1種類の物質からなる物質を純物質という。

つまり、それ以上分けることのできない物質を純物質といい、その純物質が複数混ざり合うことによってできる物質を混合物という。

では、純物質と混合物をどのようにして見分ければいいのか、その見分け方について解説していく。

純物質と混合物の見分け方

沸点に注目する
Point!

ある物質が純物質なのか混合物なのかを見分けるには、沸点に注目すればOK。

純物質の沸点や融点は物質によって一定の値に決まっている。一方、混合物では、混合している物質の種類や割合によって値にばらつきが出てくる。

ここでは、水とエタノールを例に説明する。

純物質である水とエタノールをそれぞれ加熱すると、以下のように温度が変化し、水の沸点は100℃、エタノールの沸点は78℃を示す。

一方、水とエタノールの混合物を加熱すると、温度は以下のように変化し、一定の沸点は示さない。

このとき、沸点が一定の値にならない(徐々に上がっていく)のは、水よりも沸点が低いエタノールが先に沸騰し、混合物中の水の割合が徐々に高まっていくためである。

このように、純物質は同一物質であれば沸点が一定なのに対し、混合物の沸点は(混合の割合が変われば沸点も変わるため)一定の値を示さない。
よって、ある物質が純物質か混合物かを判断したい場合、沸点や融点が常に一定の値を示すかどうかを確認すれば良いということになる。
沸点や融点が常に一定の値を示せば純物質、値に変化があれば混合物である。

混合物の分離

混合物はその状態に合わせた分離法を用いることで純物質に分離することができる。

  • ろ過(個体と液体/個体と個体)
  • 蒸留(個体と液体)
  • 分留(液体と液体)
  • 再結晶(個体と個体)
  • 抽出(溶媒に溶けるものを取り出す)
  • 昇華法(昇華性のあるものを取り出す)
  • クロマトグラフィー(ろ紙に対する吸着力の違いで分ける)

それぞれの分離法について詳しいことは以下のページを参考にしよう。

純物質と混合物の違い/見分け方まとめ

最後に、この『純物質と混合物の違い〜定義から沸点、分離法まで〜』のページで解説した内容をまとめておく。

  • 物質は大きく純物質と混合物に分けられる
  • 純物質はさらに単体と化合物に分けられる
  • 1種類の物質からなる物質のことを純物質、2種類以上の物質が混ざってできた物質を混合物という
  • 混合物はその状態に合わせた分離法を用いることで複数の純物質に分離することができ、分離法にはろ過、蒸留、分留、再結晶、抽出、昇華法、クロマトグラフィーなどがある。純物質はそれ以上分けることができない
  • 純物質の沸点や融点は物質によって一定の値に決まっているが、混合物は混合している物質の種類や割合によって値にばらつきが出る

純物質と混合物に関する演習問題

問1

【】に当てはまる用語を答えよ。

私たちの身の回りにある多くの物質は2種類以上の物質が混ざり合った【1】である。一方、他の物質が混ざっていない純粋な物質を【2】という。【2】には、単一の元素からなる【3】と、複数の元素からなる【4】がある。
【問1】解答/解説:タップで表示
解答:【1】混合物【2】純物質【3】単体【4】化合物

普段の生活において身の回りにある物質の多くは混合物である。例えば空気や海水、石油などは混合物に当てはまる。
一方、他の物質が一切混ざっていない単一の物質を純物質という。空気を構成する窒素N2や酸素O2、海水を構成する水H2Oや塩化ナトリウムNaClなどは純物質である。
純物質のうち、N2やO2など1種類の元素のみからなる物質を単体、H2OやNaClなど2種類以上の元素からなる物質を化合物という。

問2

次の物質が純物質/混合物のどちらに分類されるかを判断せよ。

(1)窒素
(2)水
(3)空気
(4)花崗岩
(5)二酸化炭素
(6)石油
【問2】解答/解説:タップで表示
解答:(1)純物質(2)純物質(3)混合物(4)混合物(5)純物質(6)混合物

(1)窒素N2は単一の物質なので純物質である。
また、構成元素がNのみなので純物質の中の単体に分類される。

(2)水H2Oは単一の物質なので純物質である。
また、構成元素がHとOの2つあるので純物質の中の化合物に分類される。

(3)空気は窒素N2や酸素O2、アルゴンArなど複数の純物質が混ざっている物質であり、混合物である。

(4)花崗(かこう)岩は石英や長石、雲母などの鉱物が含まれている岩石で、混合物である。

(5)二酸化炭素CO2は単一の物質なので純物質である。
また、構成元素がCとOの2種類あるので純物質の中の化合物に分類される。

(6)石油はガソリンや灯油、軽油などの成分から成るため、混合物である。
石油は分離法の一種である分留によって各成分に分離できる。

問3

空気は混合物であり、主に以下の純物質から構成される。
これら3つの物質を、含量の多い順に並べよ。

酸素・窒素・アルゴン
【問3】解答/解説:タップで表示
解答:窒素>酸素>アルゴン

空気を構成する物質の体積比は次の通りである。

順位 気体 体積比
1位 窒素(N2 78%
2位 酸素(O2 20%
3位 アルゴン(Ar) 1%
4位 その他 微量

ちなみに、空気の組成を質量比で見ると次のようになる。

順位 気体 質量比
1位 窒素(N2 75.524%
2位 酸素(O2 23.139%
3位 アルゴン(Ar) 1.288%
4位 その他 微量

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著者プロフィール

・化学のグルメ運営代表
・高校化学講師
・薬剤師
・デザイナー/イラストレーター

数百名の個別指導経験あり(過去生徒合格実績:東京大・京都大・東工大・東北大・筑波大・千葉大・早稲田大・慶應義塾大・東京理科大・上智大・明治大など)
2014年よりwebメディア『化学のグルメ』を運営
公式オンラインストアで販売中の理論化学ドリルシリーズ・有機化学ドリル等を執筆

著者紹介詳細