【プロ講師解説】このページでは『ケイ素の単体と化合物の性質・製法』について解説しています。解説は高校化学・化学基礎を扱うウェブメディア『化学のグルメ』を通じて6年間大学受験に携わるプロの化学講師が執筆します。
ケイ素の単体
②硬く、融点が高い
③非金属だが金属光沢があり、半導体として用いられる
④工業的製法:ケイ砂をコークスとともに加熱し、精製する
①共有結合結晶
ケイ素の単体は、繰り返し構造をした共有結合結晶(高分子)であり、組成式で表される。
高校化学において共有結合結晶の形をとる重要な物質は『Si/SiO2/SiC/C』の4つなので、ケイ素を含め全て覚えておくようにしよう。
※共有結合結晶について詳しくは共有結合結晶(例・特徴・性質・組成式・融点・電気伝導性など)を参照
②硬く、融点が高い
ケイ素の単体は共有結合結晶であるが故に、(結合が強く切れにくいので)硬く、融点も高い。
③非金属だが金属光沢があり、半導体として用いられる
ケイ素の単体は、非金属だが金属光沢をもっており、電気伝導性もある程度はもつため、高純度なものは半導体として用いられる。
④工業的製法:ケイ砂をコークスとともに加熱し、精製する
ケイ素の単体は天然には存在しないため、ケイ砂(主成分:SiO2)をコークスとともに加熱することにより粗製のケイ素(不純物を含むケイ素)を作り、それを精製することで純度の高いケイ素の単体を得る。
SiO_{2} + 2C → Si + 2CO
\]
ケイ素の酸化物(二酸化ケイ素)
②石英/水晶/ケイ砂として天然に存在
③酸性酸化物であり、塩基と中和反応する
④ガラスとして用いられる
ケイ素の酸化物として覚えておかなければいけないのは二酸化ケイ素SiO2である。SiO2には上のような特徴がある。
①単体同様、繰り返し構造をした共有結合結晶で、組成式で表される
二酸化ケイ素は単体と同様、繰り返し構造をした共有結合結晶として存在し、高分子であるため組成式で表される。
※共有結合結晶について詳しくは共有結合結晶(例・特徴・性質・組成式・融点・電気伝導性など)を参照
②石英/水晶/ケイ砂として天然に存在
二酸化ケイ素は主に石英として岩石中に存在している。
また、より大きく透明な結晶を水晶、砂状になったものをケイ砂という。
③酸性酸化物であり、塩基と中和反応する
二酸化ケイ素は非金属の酸化物なので、酸性酸化物であり、塩基と反応する場合がある。
SiO_{2} + 2NaOH → Na_{2}SiO_{3} + H_{2}O
\]
※酸化物の反応について詳しくは酸性酸化物・塩基性酸化物・両性酸化物(違い・見分け方・一覧・反応など)を参照
④ガラスとして用いられる
二酸化ケイ素を高温で加熱し融解させた後冷やして作られたガラスを、石英ガラスという。
石英ガラスは、フッ化水素と次のように反応し、溶解する。
SiO_{2} + 6HF → H_{2}SiF_{6} + 2H_{2}O
\]
ケイ素の塩(ケイ酸ナトリウム)
②水を加えて加熱すると加水分解し、粘性をもつ水ガラスになる
③工業的製法:二酸化ケイ素に炭酸ナトリウムを加えて加熱する
ケイ素を含む塩として有名なのはケイ酸ナトリウムNa2SiO3である。Na2SiO3には上のような特徴がある。
①繰り返し構造をした高分子化合物で、組成式で表される
ケイ酸ナトリウムは、繰り返し構造をした高分子化合物で、組成式を用いて表される。
②水を加えて加熱すると加水分解し、粘性をもつ水ガラスになる



水を加えて加熱することで加水分解し、粘性をもつ水ガラスになる。
③工業的製法:二酸化ケイ素に炭酸ナトリウムを加えて加熱する
ケイ酸ナトリウムは、二酸化ケイ素SiO2に炭酸ナトリウムNa2CO3を加えて加熱することで得られる。(中和反応)
SiO_{2} + Na_{2}CO_{3} → Na_{2}SiO_{3} + CO_{2}
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ケイ素のオキソ酸(ケイ酸)
②脱水するとシリカゲルになる
ケイ素を含むオキソ酸として有名なのはケイ酸H2SiO3である。H2SiO3のポイントは2つ。
①製法:水ガラスの水溶液に塩酸を反応させる
ケイ酸は、上で出てきた”水ガラス”の水溶液に塩酸HClを反応させることで得られる。
Na_{2}SiO_{3} + 2HCl → 2NaCl + H_{2}SiO_{3}
\]
Na2SiO3は弱酸を含む塩、HClは強酸なので、この反応は”弱酸遊離反応”の一種と考えることができる。
※弱酸遊離反応について詳しくは【弱酸・弱塩基遊離反応】原理や公式、反応式の作り方などを参照
また、H2SiO3の沈殿は白色のゲル状であるということも押さえておこう。
②脱水するとシリカゲルになる
ケイ酸を加熱し脱水したものをシリカゲルSiO2・nH2Oという。
シリカゲルはケイ酸に比べて空洞が多くなっており、気体を吸着しやすい。
したがって、乾燥剤や吸着剤として用いられる。
※高校化学で頻出の乾燥剤については【乾燥剤】酸性・中性・塩基性の乾燥剤一覧や分類・仕組みなどを参照
ケイ素の化合物まとめ


最後に、二酸化ケイ素SiO2・ケイ酸ナトリウムNa2SiO3・水ガラス・ケイ酸H2SiO3・シリカゲルの関係をまとめると上のようになる。
ケイ素に関する演習問題
ケイ素の単体は天然には存在しないため、【1】(主成分:SiO2)をコークスとともに加熱することにより粗製のケイ素(不純物を含むケイ素)を作り、それを精製することで純度の高いケイ素の単体を得る。
ケイ素の単体は、繰り返し構造をした【1】であり、【2】で表される。
ケイ素の単体は、非金属であるが【1】光沢があり、電気伝導性をもつため高純度なものは【2】として用いられる。
二酸化ケイ素SiO2は単体と同様、繰り返し構造をした【1】として存在し、高分子であるため【2】で表される。
二酸化ケイ素SiO2は主に【1】として岩石中に存在している。【1】の中でより大きく透明な結晶を【2】、砂状になったものを【3】という。
二酸化ケイ素SiO2は【1(酸or塩基)】性酸化物であり【2(酸or塩基)】と中和反応する。
二酸化ケイ素SiO2を高温で加熱し融解させた後、冷やして作られたガラスを【1】という。
二酸化ケイ素SiO2に炭酸ナトリウムNa2CO3を加えて加熱することで【1】が得られる。
ケイ酸ナトリウムに水を加えて加熱することで加水分解し、粘性をもつ【1】になる。
ガラスの水溶液に塩酸HClを反応させると【1】になる。【1】の沈殿は【2】色のゲル状である。
ケイ酸を加熱し脱水したものを【1】という。【1】はケイ酸に比べて空洞が多くなっており、気体を吸着しやすい。したがって、【2】や【3】として用いられる。
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・化学のグルメ運営代表
・高校化学講師
・薬剤師
・デザイナー/イラストレーター
数百名の個別指導経験あり(過去生徒合格実績:東京大・京都大・東工大・東北大・筑波大・千葉大・早稲田大・慶應義塾大・東京理科大・上智大・明治大など)
2014年よりwebメディア『化学のグルメ』を運営
公式オンラインストアで販売中の理論化学ドリルシリーズ・有機化学ドリル等を執筆
著者紹介詳細