【プロ講師解説】このページでは『芳香族アミン(アニリン)の構造・製法・性質・反応』について解説しています。解説は高校化学・化学基礎を扱うウェブメディア『化学のグルメ』を通じて6年間大学受験に携わるプロの化学講師が執筆します。

芳香族アミンとは

芳香族アミンとはベンゼン環にアミノ基(-NH2)が置換した化合物である。

高校化学で出てくる芳香族アミンの9割はアニリンであるため、今回はアニリンに特化して解説していく。

アニリンの製法

アニリンはニトロベンゼンやアニリン塩酸塩を介して次のような流れで生成される。

①ベンゼンに混酸(濃硝酸+濃硫酸)を加えることでニトロベンゼンを得る。

②ニトロベンゼンに酸性条件下(アニリンは酸化されやすいので強い酸化力をもたない塩酸をよく用いる)で還元剤である金属スズSn(or鉄Fe)を加え、アニリン塩酸塩を得る。

③アニリン塩酸塩に水酸化ナトリウム水溶液を加え、アニリンを得る。
この反応は弱塩基遊離反応である。

アニリンの反応①(塩基としての反応)

アニリンはアミノ基(-NH2)をもつため、弱塩基性物質である。
したがって、酸性物質と酸塩基反応(中和反応)を起こしたり、強塩基性物質と弱塩基遊離反応を起こしたりする。

※中和反応について詳しくは中和(定義・塩・中和反応式の作り方など)を参照
※弱塩基遊離反応について詳しくは【弱酸・弱塩基遊離反応】原理や公式、反応式の作り方などを参照

PLUS+

アニリンが塩基性を示す理由について詳しく。

アニリンは水に溶けて塩基性を示すが、これはアミノ基-NH2をもつためである。

アミノ基があることで、N原子の非共有電子対を使ってH+配位結合することができる。
ただし、非共有電子対がベンゼン環の方にも広がっていくので、アニリンは比較的弱い塩基である。

アニリンと塩酸の酸塩基反応

アニリンは塩酸HClと酸塩基反応を起こしアニリン塩酸塩を生じる。

アニリン塩酸塩と水酸化ナトリウムの弱塩基遊離反応

上で生成したアニリン塩酸塩を強塩基であるNaOHと反応させると、弱塩基であるアニリンが遊離する。

※弱塩基遊離反応について詳しくは【弱酸・弱塩基遊離反応】原理や公式、反応式の作り方などを参照

アニリンの反応②(アセチル化)

アニリンを無水酢酸(CH3CO)2Oと反応させるとアセトアニリドが生成する。

この反応はアミノ基(-NH2)の検出反応として用いられている。

また、アセトアニリドは白色の結晶でかつて解熱鎮痛剤として用いられていた。
しかし、副作用(溶血作用)をもつため現在はあまり使用されておらず、アセトアミノフェンなどで代用されている。

アニリンの反応③(ジアゾ化)

アニリンに希塩酸HClと亜硝酸ナトリウムNaNO2を加えて5℃以下に保ったまま反応させると、ジアゾ基(-N+≡N)をもつ塩化ベンゼンジアゾニウムが生成する。
この反応をアニリンのジアゾ化という。

このとき生成したジアゾニウム塩は不安定であるため、5℃以上に加熱すると分解してしまいN2の発生とともにフェノールが生成する。

アニリンの反応④(ジアゾカップリング)

温度を5℃以下の低温に保ったまま塩化ベンゼンジアゾニウムにNaOHaqを加えて塩基性にし、(フェノール由来の)ナトリウムフェノキシドと反応させるとジアゾカップリングと呼ばれる反応が起こる。

このとき生成したp-ヒドロキシアゾベンゼンは赤橙色をしており合成染料として用いられる。

アニリンの反応⑤(検出反応)

・さらし粉を加えると紫色を呈する
・二クロム酸カリウムを加えると黒色沈殿を生じる
Point!

アニリンにさらし粉CaCl(ClO)・H2O水溶液を加えると紫色になる。
また、アニリンにニクロム酸カリウムK2Cr2O7を加えるとアニリンブラックと呼ばれる黒色沈殿が生じる。

芳香族アミンに関する演習問題

問1

【】に当てはまる用語を答えよ。

ベンゼン環にアミノ基(-NH2)が付いた化合物を【1】という。

【問1】解答/解説:タップで表示
解答:【1】芳香族アミン

芳香族アミンとはベンゼン環にアミノ基(-NH2)が置換した化合物である。


問2

【】に当てはまる用語を答えよ。

代表的な芳香族アミンであるアニリンは、ベンゼンをスタートとして【1】や【2】を介して生成される。

【問2】解答/解説:タップで表示
解答:【1】ニトロベンゼン【2】アニリン塩酸塩(順不同)

アニリンはニトロベンゼンやアニリン塩酸塩を介して次のような流れで生成される。


問3

【】に当てはまる用語を答えよ。

アニリンはアミノ基(-NH2)をもつため【1】性物質である。

【問3】解答/解説:タップで表示
解答:【1】弱塩基

アニリンはアミノ基(-NH2)をもつため、弱塩基性物質である。
したがって、酸性物質と酸塩基反応(中和反応)を起こしたり、強塩基性物質と弱塩基遊離反応を起こしたりする。

問4

【】に当てはまる用語を答えよ。

アニリンは塩酸HClと酸塩基反応を起こし【1】を生じる。

【問4】解答/解説:タップで表示
解答:【1】アニリン塩酸塩

アニリンは塩酸HClと酸塩基反応を起こしアニリン塩酸塩を生じる。


問5

【】に当てはまる用語を答えよ。

アニリン塩酸塩を強塩基であるNaOHと反応させると、弱塩基である【1】が遊離する。

【問5】解答/解説:タップで表示
解答:【1】アニリン

アニリン塩酸塩を強塩基であるNaOHと反応させると、弱塩基であるアニリンが遊離する。

この反応は弱塩基遊離反応の1種である。

※弱塩基遊離反応について詳しくは【弱酸・弱塩基遊離反応】原理や公式、反応式の作り方などを参照

問6

【】に当てはまる用語を答えよ。

アニリンを無水酢酸(CH3CO)2Oと反応させると【1】が生成する。【1】は白色の結晶で、かつて解熱鎮痛剤として用いられていた。しかし副作用(【2】作用)をもつため現在はあまり使用されておらず【3】などで代用されている。

【問6】解答/解説:タップで表示
解答:【1】アセトアニリド【2】溶血【3】アセトアミノフェン

アニリンを無水酢酸(CH3CO)2Oと反応させるとアセトアニリドが生成する。

この反応はアミノ基(-NH2)の検出反応として用いられている。

また、アセトアニリドは白色の結晶でかつて解熱鎮痛剤として用いられていた。
しかし、副作用(溶血作用)をもつため現在はあまり使用されておらず、アセトアミノフェンなどで代用されている。


問7

【】に当てはまる用語を答えよ。

アニリンに希塩酸HClと亜硝酸ナトリウムNaNO2を加えて5℃以下に保ったまま反応させると、ジアゾ基(-N+≡N)をもつ【1】が生成する。この反応をアニリンの【2】化という。

【問7】解答/解説:タップで表示
解答:【1】塩化ベンゼンジアゾニウム【2】ジアゾ

アニリンに希塩酸HClと亜硝酸ナトリウムNaNO2を加えて5℃以下に保ったまま反応させると、ジアゾ基(-N+≡N)をもつ塩化ベンゼンジアゾニウムが生成する。
この反応をアニリンのジアゾ化という。


問8

【】に当てはまる用語を答えよ。

ジアゾニウム塩は不安定であるため、5℃以上に加熱すると分解し【1】の発生とともに【2】が生成する。

【問8】解答/解説:タップで表示
解答:【1】窒素N2【2】フェノール

ジアゾニウム塩は不安定であるため、5℃以上に加熱すると分解してしまいN2の発生とともにフェノールが生成する。


問9

【】に当てはまる用語を答えよ。

温度を5℃以下の低温に保ったまま塩化ベンゼンジアゾニウムにNaOHaqを加えて塩基性にし、(フェノール由来の)ナトリウムフェノキシドと反応させると【1】と呼ばれる反応が起こる。このとき生成する【2】は赤橙色をしており合成染料として用いられる。

【問9】解答/解説:タップで表示
解答:【1】ジアゾカップリング【2】p-ヒドロキシアゾベンゼン

温度を5℃以下の低温に保ったまま塩化ベンゼンジアゾニウムにNaOHaqを加えて塩基性にし、(フェノール由来の)ナトリウムフェノキシドと反応させるとジアゾカップリングと呼ばれる反応が起こる。

このとき生成したp-ヒドロキシアゾベンゼンは赤橙色をしており合成染料として用いられる。

問10

【】に当てはまる用語を答えよ。

アニリンにさらし粉CaCl(ClO)・H2O水溶液を加えると【1】色になる。また、アニリンにニクロム酸カリウムK2Cr2O7を加えると【2】と呼ばれる黒色沈殿が生じる。

【問10】解答/解説:タップで表示
解答:【1】紫【2】アニリンブラック

アニリンにさらし粉CaCl(ClO)・H2O水溶液を加えると紫色になる。
また、アニリンにニクロム酸カリウムK2Cr2O7を加えるとアニリンブラックと呼ばれる黒色沈殿が生じる。

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著者プロフィール

・化学のグルメ運営代表
・高校化学講師
・薬剤師
・デザイナー/イラストレーター

数百名の個別指導経験あり(過去生徒合格実績:東京大・京都大・東工大・東北大・筑波大・千葉大・早稲田大・慶應義塾大・東京理科大・上智大・明治大など)
2014年よりwebメディア『化学のグルメ』を運営
公式オンラインストアで販売中の理論化学ドリルシリーズ・有機化学ドリル等を執筆

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