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自己酸化還元反応(原理・例・反応式など)
目次
はじめに
【プロ講師解説】このページでは『自己酸化還元反応(原理・例・反応式など)』について解説しています。
自己酸化還元反応
- 塩素Cl2を水に通じると次のような反応が起こる。
\[ \mathrm{\underbrace{ Cl_{2} }_{ 0 }+H{2}O→H\underbrace{ Cl }_{ -1 }+H\underbrace{ Cl }_{ +1 }O} \]
- Cl2を構成する2個のClのうち、片方は塩化水素HClに、片方は次亜塩素酸HClOになっている。
- このとき、各物質中のClの酸化数を比較すると、Cl2を構成するClの酸化数は0なのに対し、HClに含まれるClの酸化数はー1、HClOに含まれるClの酸化数は+1である。
\[ \begin{align}&\underbrace{ \mathrm{Cl_{2}} }
_{ 0 }\\
&H\underbrace{ \mathrm{Cl} }
_{ +1 }\\
&H\underbrace{ \mathrm{Cl} }
_{ -1 }O \end{align}\]
- もともと2個のClの酸化数は共に0だったが、片方は減ってー1、片方は増えて+1になっていることからCl2は酸化剤・還元剤両方の役割を果たしていることがわかる。このように、同一物質が酸化剤としても還元剤としてもはたらく反応を自己酸化還元反応という。
自己酸化還元反応の具体例
- 有名な自己酸化還元反応を紹介する。
●自己酸化還元反応
- 塩素を水酸化カルシウム水溶液に通じる
- 塩素酸カリウムに酸化マンガン(Ⅳ)を加えて加熱する
- 過酸化水素水に酸化マンガン(Ⅳ)を加える
- 亜硝酸アンモニウム水溶液を加熱する
- ハロゲン化銀に光を当てる
❶ 塩素を水酸化カルシウム水溶液に通じる
\[ \mathrm{Cl_{2}+Ca(OH)_{2}\overset{加熱+触媒}{→}CaCl(ClO)・H_{2}O} \]
※触媒には酸化マンガンMnO2を用いる。
- この反応はさらし粉の製法の1種である。気体の製法について詳しくは次のページを参照のこと。
❷ 塩素酸カリウムに酸化マンガン(Ⅳ)を加えて加熱する
\[ \mathrm{2KClO_{3}\overset{加熱}{→}2KCl+3O_{2}} \]
- この反応は酸素の製法の1種である。気体の製法について詳しくは次のページを参照のこと。
❸ 過酸化水素水に酸化マンガン(Ⅳ)を加える
\[ \mathrm{2H_{2}O_{2}→2H_{2}O+O_{2}} \]
- この反応は酸素の製法の1種である。気体の製法について詳しくは次のページを参照のこと。
❹ 亜硝酸アンモニウム水溶液を加熱する
\[ \mathrm{NH_{4}NO_{2}\overset{加熱}{→}2H_{2}O+N_{2}} \]
- この反応は窒素の製法の1種である。気体の製法について詳しくは次のページを参照のこと。
❺ ハロゲン化銀に光を当てる
\[ \mathrm{2AgX\overset{光}{→}2Ag+X_{2}} \]
- ハロゲン化銀には感光性があり、光を照射することで分解する。
- この反応は写真フィルムや印画紙、X線フィルムなどに利用されている。