【プロ講師解説】化学のグルメでは、高校化学・化学基礎の一問一答を掲載しています。解説は高校化学・化学基礎を扱うウェブメディア『化学のグルメ』を通じて6年間大学受験に携わるプロの化学講師が執筆します。一問一答コンテンツ一覧は化学のグルメ『高校化学・化学基礎一問一答コンテンツ一覧』をご覧下さい。

一問一答

問1

【】に当てはまる用語を答えよ。

油脂は【1】と【2】によって構成される。
【問1】解答/解説:タップで表示
解答:【1】グリセリン【2】脂肪酸(【1】・【2】は順不同)

油脂(トリグリセリド)はグリセリンと脂肪酸によって構成されている。

※グリセリンについて詳しくはグリセリン(構造式・化学式・油脂との関係など)を参照

問2

【】に当てはまる用語を答えよ。

グリセリンの分子式は【1】であり、【2】価のアルコールである。
【問2】解答/解説:タップで表示
解答:【1】C3H8O3【2】3

グリセリンの化学式(分子式)はC3H8O3であり、各炭素に一個ずつヒドロキシ基(-OH)が付いた、3価のアルコールである。

※グリセリンについて詳しくはグリセリン(構造式・化学式・油脂との関係など)を参照

問3

【】に当てはまる用語を答えよ。

炭素数の多い1価のカルボン酸を【1】という。
【1】の特徴として、全炭素数が【2(偶or奇)】数、炭化水素基の部分に存在する不飽和結合は【3(シスorトランス)】型などがある。
【問3】解答/解説:タップで表示
解答:【1】高級脂肪酸【2】偶【3】シス

炭素数の多い1価のカルボン酸を高級脂肪酸という。
油脂を構成する脂肪酸は全て高級脂肪酸の仲間であり、以下の特徴をもっている。

  • 全炭素数が偶数
  • 炭化水素基の部分が直鎖
  • 炭化水素基の部分に存在する不飽和結合はシス(cis)型

※高級脂肪酸について詳しくは高級脂肪酸(炭素数・覚え方・種類・一覧・構造式・分子量など)を参照

問4

【】に当てはまる用語を答えよ。

飽和脂肪酸は炭素数が増加するにつれて融点が【1(上昇or下降)】する。
これは、炭素数が増えると分子量が【2(大きor小さ)】くなるため、分子間に働く引力が【3(強or弱)】くなるためである。
【問4】解答/解説:タップで表示
解答:【1】上昇【2】大き【3】強

飽和脂肪酸は炭素数が増加するにつれて融点が上昇する。
これは、炭素数が増えると分子量が大きくなるため、分子間に働く引力が強くなるためである。

※高級脂肪酸について詳しくは高級脂肪酸(炭素数・覚え方・種類・一覧・構造式・分子量など)を参照

問5

【】に当てはまる用語を答えよ。

不飽和脂肪酸はC=C結合部分が【1(シスorトランス)】型の配置を取るため、炭素鎖が【2(直線or折れ線)】形構造をしている。
したがって、分子同士が接近しにくくなるため、分子間に働く引力が【3(強or弱)】くなり、融点が【4(高or低)】くなる。
【問5】解答/解説:タップで表示
解答:【1】シス【2】折れ線【3】弱【4】低

不飽和脂肪酸は飽和脂肪酸に比べて融点が低い。
不飽和脂肪酸はC=C結合部分がcis型の配置を取るため、炭素鎖が折れ線形構造をしている。
したがって、直線形の飽和脂肪酸と比べて分子同士が接近しにくくなるため、分子間に働く引力が弱くなり、融点が低くなる。

※高級脂肪酸について詳しくは高級脂肪酸(炭素数・覚え方・種類・一覧・構造式・分子量など)を参照

問6

【】に当てはまる用語を答えよ。

グリセリン1分子に高級脂肪酸3分子が結合した3価のエステル(トリグリセリド)を【1】という。
【問6】解答/解説:タップで表示
解答:【1】油脂

グリセリン1分子に高級脂肪酸3分子が結合した3価のエステル(トリグリセリド)を油脂という。

問7

【】に当てはまる用語を答えよ。

油脂に含まれる3つの脂肪酸が非対称の場合、その油脂は【1】をもつ。
【問7】解答/解説:タップで表示
解答:【1】不斉炭素原子(C

油脂に含まれる3つの脂肪酸が非対称の場合、その油脂は不斉炭素原子(C)をもつ。

問8

【】に当てはまる用語を答えよ。

長い炭素鎖をもったエステルである油脂は、【1(極性or無極性)】溶媒であるベンゼンやエーテルには溶けやすいが、【2(極性or無極性)】溶媒である水やエタノールには溶けにくい。
【問8】解答/解説:タップで表示
解答:【1】無極性【2】極性

長い炭素鎖をもったエステルである油脂は、無極性溶媒であるベンゼンやエーテルには溶けやすいが、極性溶媒である水やエタノールには溶けにくい。
水に溶けにくい油脂は、デンプンやグリコーゲンなどの多糖類(水に溶ける)に比べて安定であるため、長期保存用のエネルギー源として用いられる。

問9

【】に当てはまる用語を答えよ。

油脂の構成脂肪酸中に不飽和結合が多いと、分子同士が近づき【1(やすorにく)】くなって、分子間に働く引力が【2(強or弱)】まり、融点が【3(高or低)】くなる。
【問9】解答/解説:タップで表示
解答:【1】にく【2】弱【3】低

構成脂肪酸中に不飽和結合C=C(cis型)をもち、折れ線形の構造を多く含む油脂は、分子同士が近づきにくくなって、分子間に働く引力が弱まり、融点が低くなる。
反対に、構成脂肪酸に不飽和結合C=C(cis型)が少ないと、油脂分子同士が近づきやすくなって分子間力が強くなるので融点が高くなる。

問10

【】に当てはまる用語を答えよ。

エステルのアルカリによる加水分解を【1】という。
【問10】解答/解説:タップで表示
解答:【1】けん化

エステルである油脂を水酸化ナトリウムのようなアルカリと共に加熱すると、エステル結合が加水分解されてグリセリンと脂肪酸のナトリウム塩が得られる。

脂肪酸ナトリウムは一般に「石けん」と呼ばれていることから、一般にエステルのアルカリによる加水分解をけん化という。

※けん化について詳しくはけん化価とは(計算問題・ヨウ素価との違いなど)を参照

問11

【】に当てはまる用語を答えよ。

油脂は酵素リパーゼによって加水分解され、【1】と【2】になる。
【問11】解答/解説:タップで表示
解答:【1】グリセリン【2】脂肪酸(【1】・【2】は順不同)

油脂は酵素リパーゼによって加水分解され、グリセリン脂肪酸になる。

※油脂について詳しくは油脂(構造・酸化・加水分解・グリセリンや脂肪酸との関係など)を参照

問12

【】に当てはまる用語を答えよ。

不飽和度が大きいために空気中で容易に固まる油を【1】、大豆油や綿実油のように固まる程度が少し弱い油を【2】、空気中で固まりにくい油を【3】という。また、【1】にPb、Mnなどの酸化物や塩を入れて加熱処理し、乾性が増した油を【4】という。
【問12】解答/解説:タップで表示
解答:【1】乾性油【2】半乾性油【3】不乾性油【4】ボイル油

油の乾き易さ(空気中での重合し易さ)は油脂に含まれているC=Cの数で決まる。
つまり、不飽和度が大きいために空気中で容易に固まるものを乾性油(例:アマニ油、キリ油)、固まる程度が少し弱いものを半乾性油(例:大豆油、綿実油)、空気中で固まりにくいものを不乾性油(例:ツバキ油、オリーブ油)という。
また、乾性油にPb、Mnなどの酸化物や塩を入れて加熱処理し、乾性が増したものをボイル油という。
ボイル油は、油性ペイントに用いられる。

※油脂について詳しくは油脂(構造・酸化・加水分解・グリセリンや脂肪酸との関係など)を参照

問13

【】に当てはまる用語を答えよ。

油脂を空気中に放置すると、黄色味を帯び、不快な匂いを生じて酸性を示すようになる。これを【1】という。これは、酸素による酸化を受ける際、重合以外に開裂を起こして低分子量の【2】や【3】を生じて悪臭を放つためである。したがって、不飽和度の【4(大きor小さ)】い油脂ほど【1】し易く、油が悪くなりやすい。
【問13】解答/解説:タップで表示
解答:【1】酸敗【2】アルデヒド【3】カルボン酸【4】大き(【2】・【3】は順不同)

油脂を空気中に放置すると、黄色味を帯び、不快な匂いを生じて酸性を示すようになる。
これを酸敗という。
これは、O2による酸化を受ける際、重合以外に開裂を起こして低分子量のアルデヒドやカルボン酸を生じて悪臭を放つためである。
したがって、不飽和度の大きい油脂ほど酸敗し易く、油が悪くなりやすい。

※油脂について詳しくは油脂(構造・酸化・加水分解・グリセリンや脂肪酸との関係など)を参照

問14

【】に当てはまる用語を答えよ。

油脂にニッケルNiを触媒として水素を付加し、より飽和した油脂にすることができる。
このとき生じた油脂を【1】といい、融点が【2(高or低)】く酸敗しにくいので、常温では【3(固or液or気)】体である。
【問14】解答/解説:タップで表示
解答:【1】硬化油【2】高【3】固

構成脂肪酸中にC=Cをもつ油脂は、H2やハロゲンの付加を受ける。
したがって、不飽和度の大きい脂肪酸を構成成分とする液体状の油脂に、ニッケルNiを触媒としてH2を付加し、より飽和した油脂にすることができる。
このとき生じた油脂は融点が高く酸敗しにくいので、常温では固体であり、悪臭がない。
これを硬化油といい、マーガリンやローソクの製造にこの方法が使われる。

※油脂について詳しくは油脂(構造・酸化・加水分解・グリセリンや脂肪酸との関係など)を参照

問15

【】に当てはまる用語を答えよ。

不飽和度が小さいために融点が高く、常温で固体の油脂を【1】、不飽和度が大きいために融点が低く、常温で液体の油脂を【2】という。
【問15】解答/解説:タップで表示
解答:【1】脂肪【2】脂肪油

油脂の融点は不飽和結合が少ない(不飽和度が低い)ほど高くなる。
したがって、油脂を常温での状態で分類することができる。
つまり、不飽和度が小さいため融点が高く常温で固体の油脂を脂肪、不飽和度が大きいために融点が低く常温で液体の油脂を脂肪油という。

※油脂について詳しくは油脂(構造・酸化・加水分解・グリセリンや脂肪酸との関係など)を参照

問16

けん化価とは何か。定義を答えなさい。
【問16】解答/解説:タップで表示
解答:下記参照

けん化価とは油脂1gをけん化(=油脂を水酸化カリウムなどのアルカリで加水分解すること)するために必要な水酸化カリウムのmg数である。

※けん化価について詳しくはけん化価とは(計算問題・ヨウ素価との違いなど)を参照

問17

分子量450の油脂と600の油脂のけん化価を比較するとどちらが大きいか。
【問17】解答/解説:タップで表示
解答:分子量450の油脂

けん化価は油脂の分子量に反比例する。したがって、分子量450の油脂のけん化価と分子量600の油脂のけん化価を比較すると分子量450の油脂のけん化価の方が大きい。

※けん化価について詳しくはけん化価とは(計算問題・ヨウ素価との違いなど)を参照

問18

分子量300の油脂のけん化価を求めなさい。(整数値で解答)
【問18】解答/解説:タップで表示
解答:560

けん化価を求める公式に今回の油脂の分子量300を代入すると…

\[
\begin{align}
けん化価&=\frac{ 1.68×10^{5} }{ M }\\
&=\frac{ 1.68×10^{5} }{ 300 }\\
&=560
\end{align}
\]

けん化価は560となる。

※けん化価について詳しくはけん化価とは(計算問題・ヨウ素価との違いなど)を参照

問19

ヨウ素価とは何か。定義を答えなさい。
【問19】解答/解説:タップで表示
解答:以下参照

ヨウ素価とは油脂100gに付加するヨウ素のg数である。

問20

ヨウ素価は油脂中の何の数に比例するか。
【問20】解答/解説:タップで表示
解答:二重結合

\[
ヨウ素価=\frac{ 2.54a×10^{4} }{ M }
\]

ヨウ素価は油脂の二重結合の数に比例し、分子量に反比例する。

※ヨウ素価について詳しくはヨウ素価とは(計算問題・けん化価との違いなど)を参照

問21

分子量1000、1分子中の二重結合の数が10個の油脂のヨウ素価を求めなさい。(整数値で解答)
【問21】解答/解説:タップで表示
解答:254

問題文に分子量1000、1分子中の二重結合の数が10個と書かれているので、これらをヨウ素価の公式に代入すると…

\[
\begin{align}
ヨウ素価&=\frac{ 2.54a×10^{4} }{ M }\\
&=\frac{ 2.54×10×10^{4} }{ 1000 }\\
&=254
\end{align}
\]

ヨウ素価は254である。

※ヨウ素価について詳しくはヨウ素価とは(計算問題・けん化価との違いなど)を参照

問22

分子量878.2の油脂100gに付加するヨウ素は173.7gであった。この油脂1分子中の二重結合の数を求めなさい。(整数値で解答)
【問22】解答/解説:タップで表示
解答:6個

油脂100gに付加するヨウ素とはすなわちヨウ素価のことなので、この油脂のヨウ素価は173.7である。
したがって、次のような式をたてることができる。

\[
\begin{align}
173.7&=\frac{ 2.54a×10^{4} }{ 878.2 }\\
\leftrightarrow a≒6
\end{align}
\]

よって、この油脂の二重結合の数は6個である。

※ヨウ素価について詳しくはヨウ素価とは(計算問題・けん化価との違いなど)を参照

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著者プロフィール

・化学のグルメ運営代表
・高校化学講師
・薬剤師
・デザイナー/イラストレーター

数百名の個別指導経験あり(過去生徒合格実績:東京大・京都大・東工大・東北大・筑波大・千葉大・早稲田大・慶應義塾大・東京理科大・上智大・明治大など)
2014年よりwebメディア『化学のグルメ』を運営
公式オンラインストアで販売中の理論化学ドリルシリーズ・有機化学ドリル等を執筆

著者紹介詳細