【プロ講師解説】このページでは『二糖類(マルトース・セロビオース・スクロース・ラクトース・イソマルトース・トレハロースの構造や還元性、反応、結合など)』について解説しています。解説は高校化学・化学基礎を扱うウェブメディア『化学のグルメ』を通じて6年間大学受験に携わるプロの化学講師が執筆します。
はじめに
このページを読むと『二糖類(マルトース・セロビオース・スクロース・ラクトース・イソマルトース・トレハロースの構造や還元性、反応、結合など)』に関する以下の項目について学ぶことができます。
- 代表的な二糖類の構造について
- 各二糖類に関する基礎知識
- 各二糖類の性質(水溶性・旋光性・甘味・還元性・加水分解など)
- 二糖類に関する問題演習
二糖類とは
二糖類とは単糖類2つが結合してできた糖である。
分子式は(単糖の分子式であるC6H12O6に2をかけて、結合を作るために取り除かれた水分子H2Oの分を差し引いた)C12H22O11となる。
2×C_{6}H_{12}O_{6}-H_{2}O=C_{12}H_{22}O_{11}
\]
二糖類の一覧
- マルトース(麦芽糖)
- セロビオース
- ラクトース(乳糖)
- スクロース(ショ糖)
- イソマルトース
- トレハロース
高校で出てくる二糖類は主にマルトース(麦芽糖)・セロビオース・ラクトース(乳糖)・スクロース(ショ糖)・イソマルトース・トレハロースの6つ。ここからはこれらについて個別に解説していく。
マルトース(麦芽糖)
α-グルコース2分子が1位と4位のヒドロキシ基(-OH)で縮合してできた二糖をマルトース(麦芽糖)という。
このとき、縮合することで作られたエーテル結合(-O-)をグリコシド結合(α-1,4-グリコシド結合)という。
また、マルトースの右端にはヘミアセタール構造と呼ばれる構造が存在する。
このヘミアセタール構造があることでマルトースは還元性を示す。
上図含め、参考書等でよく見る図だと横まっすぐに結合してるように見えるが、マルトースの実際の構造は以下のような「折れ曲がった」形になっている。
セロビオース
β-グルコース2分子のうち、一方の分子を180°回転させた状態(裏返した状態)で1位と4位の-OHが縮合してできた二糖をセロビオースという。
このとき生じたエーテル結合をグリコシド結合(β-1,4-グリコシド結合)という。
また、ヘミアセタール構造をもつため、還元性を示す。
セロビオースの実際の構造は、マルトースと異なり、ほぼまっすぐになっている。
ラクトース(乳糖)
β-ガラクトース(表)の1位の-OHとβ-グルコース(裏)の4位の-OHが縮合してできた二糖をラクトース(乳糖)という。
ラクトースもマルトース・セロビオース同様、グリコシド結合(β-1,4-グリコシド結合)とヘミアセタール構造が存在する。
スクロース(ショ糖)
α-グルコース(表)の1位の-OHとβ-フルクトース(裏)の2位の-OHが縮合してできた二糖をスクロース(ショ糖)という。
スクロースは、フルクトースの2位にあるヒドロキシ基を縮合に使ってしまっており、ヘミアセタール構造をもたない。
したがって、(マルトースやラクトースと異なり)還元性は示さない。
イソマルトース
α-グルコース(表)の1位の-OHとα-グルコース(表)の6位の-OHが縮合してできた二糖をイソマルトースという。
イソマルトースは、ヘミアセタール構造をもつため、還元性を示す。
トレハロース
α-グルコース(表)の1位の-OHとα-グルコース(表)の1位の-OHが縮合してできた二糖をトレハロースという。
このとき、2つのグルコースのヘミアセタール構造が縮合に使われてしまっているため、水溶液中でアルデヒド基(-CHO)に変化できる構造が存在しない。したがって、トレハロースは還元性を示さない。
二糖の性質
二糖類は、主にその構造に由来する性質をいくつかもっている。いずれも入試で問われる部分なので必ず押さえておこう。
水溶性
単糖類と同じように、炭素数に対する-OHの数の比率が高い(炭素数12に対して-OH8コ)ので水によく溶ける。
また、水溶液中では(スクロース・トレハロースを除き)ヘミアセタール構造をもつため、以下のような平衡状態になっている。
マルトース
セロビオース
ラクトース
スクロース
甘い味
二糖類は分子内に多くの-OHをもつため甘い味がする。
光学活性・旋光性
分子内に不斉炭素原子(*C)をもつため、光学活性を示す。
また、水溶液中では、右端に残ったヘミアセタール構造のために、環状構造(α型、β型)と一部鎖状構造(アルデヒド型)が平衡状態にある。
この結果、二糖類は旋光性を示す。(ヘミアセタール構造をもたないスクロース・トレハロースは例外)
還元性



水溶液中では、縮合に使われずに残ったヘミアセタール構造が存在するため、一部鎖状のアルデヒド型構造を取ることができる。
この結果、二糖類はフェーリング反応や銀鏡反応を示す。(ヘミアセタール構造をもたないスクロース・トレハロースは例外)
加水分解する



二糖類は、酵素または酸の触媒作用により加水分解して、単糖二分子となる。
\underbrace{C_{12}H_{22}O_{11} }_{ 二糖 }+H_{2}O →^{ 酵素or酸 } \underbrace{ C_{6}H_{12}O_{6} }_{ 単糖 } + \underbrace{ C_{6}H_{12}O_{6} }_{ 単糖 }
\]
二糖 | 単糖 | 酵素 |
---|---|---|
マルトース | グルコース×2 | マルターゼ |
セロビオース | グルコース×2 | セロビアーゼ |
ラクトース | ガラクトース+グルコース | ラクターゼ |
スクロース | グルコース+フルクトース | スクラーゼ (インベルターゼ) |
二糖類に関する演習問題
問1
α-グルコース2分子が1位と4位のヒドロキシ基で縮合してできた二糖を【1】という。
このとき、縮合することで作られたエーテル結合を【2】という。
また、【1】の右端には【3】と呼ばれる構造が存在する。【3】により【1】は【4】性を示す。
問2
β-グルコース2分子のうち、一方の分子を180°回転させた状態(裏返した状態)で1位と4位のヒドロキシ基が縮合してできた二糖を【1】という。
問3
β-ガラクトース(表)の1位のヒドロキシ基とβ-グルコース(裏)の4位のヒドロキシ基が縮合してできた二糖を【1】という。
問4
α-グルコース(表)の1位のヒドロキシ基とβ-フルクトース(裏)の2位のヒドロキシ基が縮合してできた二糖を【1】という。
【1】を加水分解したときに生成するグルコースとフルクトースの1:1の混合物を【2】という。
問5
α-グルコース(表)の1位のヒドロキシ基とα-グルコース(表)の6位のヒドロキシ基が縮合してできた二糖を【1】という。
また、α-グルコース(表)の1位のヒドロキシ基とα-グルコース(表)の1位のヒドロキシ基が縮合してできた二糖を【2】という。
【1】と【2】のうち、還元性をもつのは【3】である。
問6
二糖類は、炭素数に対するヒドロキシ基の比率が【1(高or低)】いので水によく溶ける。
問7
多くの二糖類は、水溶液中において、縮合に使われずに残った【1】構造が存在するため、一部鎖状の【2】型構造を取ることができる。
したがって、【3】反応や【4】反応を示す。
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・化学のグルメ運営代表
・高校化学講師
・薬剤師
・デザイナー/イラストレーター
数百名の個別指導経験あり(過去生徒合格実績:東京大・京都大・東工大・東北大・筑波大・千葉大・早稲田大・慶應義塾大・東京理科大・上智大・明治大など)
2014年よりwebメディア『化学のグルメ』を運営
公式オンラインストアで販売中の理論化学ドリルシリーズ・有機化学ドリル等を執筆
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