【プロ講師解説】このページでは『pHの定義から計算に使う公式、基礎的なpHの求め方(弱酸・弱塩基・強酸・強塩基)、希釈溶液のpHの求め方、混合溶液のpHの求め方など』について解説しています。解説は高校化学・化学基礎を扱うウェブメディア『化学のグルメ』を通じて6年間大学受験に携わるプロの化学講師が執筆します。
pHとは
水溶液の液性は、水溶液中の水素イオンのモル濃度[H+]で決まる。25℃において、[H+]と液性の関係は次のようになる。
- 【純水と同じ】[H+] = 1.0×10-7(mol/L) → 中性
- 【純水より大きい】[H+] > 1.0×10-7(mol/L) → 酸性
- 【純水より小さい】[H+] < 1.0×10-7(mol/L) → 塩基性
[H+]はとても重要な数値だが、値が小さすぎてやや扱いづらい。そこで登場するのが「pH(水素イオン指数)」である。
[H^{+}]=1.0×10^{-n}mol/L → pH=n
\]
液性をpHで表すと次のようになる。
- [H+] = 1.0×10-7(mol/L) つまり pH = 7のとき 中性
- [H+] > 1.0×10-7(mol/L) つまり pH < 7のとき 酸性
- [H+] < 1.0×10-7(mol/L) つまり pH > 7のとき 塩基性
pHの値によって酸・塩基の強さがわかる。
logの使い方
log_{10}A + log_{10}B = log_{10}AB\\
log_{10}A – log_{10}B = log_{10}\frac{ A }{ B }\\
log_{10}10^{A} = A
\]
pHの公式を学習する上で前提となる高校数学の知識(log計算)を押さえておこう。
以下の説明は上の3つの公式を知っていること前提で進めていく。
pH計算の公式
NO.1 | pH = -log10[H+] |
NO.2 | pOH = -log10[OH–] |
NO.3 | [H+][OH–]= 1.0×10-14 |
NO.4 | pH + pOH = 14 |
NO.5 | [H+]= c×m×α (c:溶液のモル濃度、m :価数、α:電離度) |
NO.6 | [OH–]= c×m×α (c:溶液のモル濃度、m :価数、α:電離度) |
pHに関する重要な公式を順番に確認していこう。
【公式1】pH = -log10[H+]
[H^{+}] = 1.0×10^{-n}\\
↔ -log_{10}[H^{+}] = -log_{10}10^{-n}(= n)\\
↔ pH = -log_{10}[H^{+}] \]
【公式2】pOH = -log10[OH–]
pOHは水酸化物イオン指数であり、水溶液中の水酸化物イオンのモル濃度[OH–]との関係は次のようになる。(公式1のOHバージョン!)
pOH = -log_{10}[OH^{-}] \]
【公式3】[H+][OH–] = 1.0×10-14
これは水のイオン積(求め方・温度やpHとの関係など)の所で紹介している通り。必ず覚えておくようにしよう。
[H^{+}][OH^{-}]=1.0×10^{-14}
\]
【公式4】pH + pOH = 14
この公式は公式3を変形することで導出できる。
[H^{+}][OH^{-}] = 1.0×10^{-14}\\
↔ -log_{10}[H^{+}][OH^{-}] = -log_{10}1.0×10^{-14}\\
↔ -( log_{10}[H^{+}] + log_{10}[OH^{-}] ) = 14\\
↔ – log_{10}[H^{+}] – log_{10}[OH^{-}] = 14\\
↔ pH + pOH = 14
\]
【公式5】[H+] = c×m×α(c:溶液のモル濃度、m :価数、α:電離度)
溶液のモル濃度cに価数m(酸がもっているH+の数)と電離度α(溶解している酸に対する、電離している酸の割合)をかけるとH+のモル濃度[H+]を求めることができる。
[H^{+}]=c×m×α
\]
【公式6】[OH-] = c×m×α(c:溶液のモル濃度、m :価数、α:電離度)
溶液のモル濃度cに価数m(塩基がもっているOH–の数)と電離度α(溶解している塩基に対する、電離している塩基の割合)をかけるとOH–のモル濃度[OH–]を求めることができる。
[OH^{-}]=c×m×α
\]
強酸・弱酸のpHの求め方
STEP1 | [H+]= c×m×α より、[H+]を求める |
STEP2 | pH = -log10[H+]より、pHを求める |
「強酸」
問題
STEP1
まずは、[H+]=c×m×αの公式を使って、[H+]を求めていく。
\begin{align} [H^{+}] &= 1.0×10^{-2}×1×1 \\
&= 1.0×10^{-2} \end{align}
\]
STEP2
次に、pH=ーlog[H+]の公式を用いて、pHを求めていく。
\begin{align} pH&=-log(1.0×10^{-2}) \\
&= 2.0 \end{align}
\]
ちなみに、強酸の電離度は書かれていない場合もあるが、そういうときは基本的に「1」だと考えよう。
「弱酸」
問題
STEP1
まずは、[H+]=c×m×αの公式を使って、[H+]を求めていく。
\begin{align} [H^{+}]&=0.10×10^{-3} × 1 × 0.01 \\
&=1.0×10^{-6} \end{align}
\]
強酸と異なり、電離度が1でないことに注意しよう。
STEP2
次に、pH=ーlog[H+]の公式を用いて、pHを求めていく。
\begin{align} pH&=-log(1.0×10^{-6}) \\
&=6.0 \end{align}
\]
強塩基・弱塩基のpHの求め方
STEP1 | [OH–]=c×m×α より、[OH–]を求める |
STEP2 | [H+][OH–] = 1.0×10-14より、[H+]を求める |
STEP3 | pH = -log10[H+]より、pHを求める |
「強塩基」
問題
STEP1
まずは、[OH–]=c×m×αの公式を使って、[OH–]を求めていく。
\begin{align} [OH^{-}]&=1.0×10^{-2}×1×1\\
&=1.0×10^{-2} \end{align}
\]
STEP2
次に、[H+][OH–]=1.0×10-14の公式より[H+]を求めていく。
\begin{align} [H^{+}]&=\frac{ 1.0×10^{-14} }{ [OH^{-}] }\\
&=\frac{ 1.0×10^{-14} }{ 1.0×10^{-2} }\\
&=1.0×10^{-12}\end{align}
\]
STEP3
最後に、pH=-log[H+]の公式を用いてpHを求めていく。
\begin{align} pH&=-log(1.0×10^{-12})\\
&=12 \end{align}
\]
希釈溶液のpH計算
STEP1 | 希釈前のmolを求める |
STEP2 | STEP1で得たmolを希釈後のLで割る → 溶液の濃度(mol/L)を求める |
STEP3 | STEP2で求めた濃度を[H+]= c×m×αのcに代入し[H+]を求める |
STEP4 | [H+]の値をpH = -log10[H+]に代入し、pHを求める |
希釈溶液というのは、もともとあった溶液を薄めた物のこと。
pHの計算問題では、この希釈溶液の関連の問題がよく出題されるので、解き方をきちんと定着させておこう。
問題
STEP1
まずは、希釈前のmolを求める。
1.0×10^{-2}(mol/L) × \frac{ 1 }{ 1000 }(L) = 1.0×10^{-5}(mol)
\]
STEP2
次に、STEP1で求めたmolをLで割ることにより、濃度を導き出す。
そのmolを、希釈後のLで割ることで濃度(mol/L)を求める。
\frac{ 1.0×10^{-5}(mol) }{ \displaystyle \frac{ 100 }{ 1000 }(L) } = 1.0×10^{-4}(mol/L)
\]
STEP3
次に、[H+]=c×m×αの公式を使って、[H+]を求めていく。
\begin{align} [H^{+}]&=1.0×10^{-4} ×1×1\\
&=1.0×10^{-4} \end{align}
\]
STEP4
次に、pH=-log[H+]の公式を用いて、pHを求めていく。
\begin{align} pH&=-log(1.0×10^{-4})\\
&=4.0 \end{align}
\]
混合溶液のpH計算
STEP1 | 酸から生じるH+、塩基から生じるOH–それぞれのmolを求める |
STEP2 | STEP1で求めたmol同士で、値が正になるように引き算する → 中和できずに余ったH+(またはOH–)のmolを求める |
今回はH+が余ったとすると… | |
STEP3 | STEP2で求めた値をLで割り、H+の濃度([H+])を求める |
STEP4 | [H+]の値をpH = -log10[H+]に代入し、pHを求める |
混合溶液のpHの求め方は少し複雑。例を用いながら説明していこう。
問題
STEP1
まずは、HClから生じるH+、NaOHから生じるOH–のmolをそれぞれ求めていく。
\begin{align} H^{+}&=1.0×10^{-2}(mol/L) × \frac{ 10 }{ 1000 }(L) × 1\\
&= 1.0×10^{-4}(mol) \end{align}
\]
\begin{align} OH^{-}&=1.0×10^{-3}(mol/L) × \frac{ 10 }{ 1000 }(L) × 1\\
&= 1.0×10^{-5}(mol) \end{align}
\]
STEP2
次に、STEP1で求めたmol同士で引き算することで、中和で余ったH+(又はOHー)のmolを求める。
\underbrace{ 1.0×10^{-4}}_{ HClから出たH^{+} } – \underbrace{ 1.0×10^{-5}}_{ NaOHから出たOH^{-} } = \underbrace{ 9.0×10^{-5}}_{ 余ったH^{+} }
\]
STEP3
次に、STEP2で求めたmolをLで割ることにより、H+の濃度を導き出す。
\frac{ 9.0×10^{-5}(mol) }{ \displaystyle \frac{ 10+10 }{ 1000 }(L) } = 4.5×10^{-3}(mol/L)
\]
STEP4
最後に、pH=-log[H+]の公式を用いてpHを求めていく。
\begin{align} pH&=-log(4.5×10^{-3})\\
&=2.35\\
&≒2.4 \end{align}
\]
pHに関する演習問題
水は電離して【1】(H+)と【2】(OH–)を生じる。
\[
H_{2}O ⇄ H^{+} + OH^{-}
\]
水の電離度は25℃でα=1.8×10-9と極めて【3(大きor小さ)】いので、電離している水分子はごく僅かである。また、(反応式の係数から)H+とOH–は等量生じるので、水中のH+とOH–のモル濃度は等しくなっている。
H+とOH–のモル濃度はそれぞれ【4】、【5】と呼ばれ、【6】、【7】と表される。ちなみに、25℃では、【6】、【7】はいずれも1.0×10-7(mol/L)である。
以上より、25℃における【6】と【7】の積は1.0×10-14(mol/L)2となり、この数値のことを【8】という。
水のイオン積Kwは【1】が一定のとき一定の値となる。
水溶液の水素イオン濃度[H+]は極めて小さい値となるため[H+]を10-n(mol/L)で表し、このnを【1】という。
pHは酸・塩基の強さを表す指標として用いられ、溶液の性質は、pH=7のときは【1】、pHが7より小さいときは【2】、pHが7より大きいときは【3】となる。
溶液に酸を加えると、溶液のpHは【1(大きor小さ)】くなり、塩基を加えると【2(大きor小さ)】くなる。
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・化学のグルメ運営代表
・高校化学講師
・薬剤師
・デザイナー/イラストレーター
数百名の個別指導経験あり(過去生徒合格実績:東京大・京都大・東工大・東北大・筑波大・千葉大・早稲田大・慶應義塾大・東京理科大・上智大・明治大など)
2014年よりwebメディア『化学のグルメ』を運営
公式オンラインストアで販売中の理論化学ドリルシリーズ・有機化学ドリル等を執筆
著者紹介詳細