【プロ講師解説】このページでは『無機物の定義や分類、有機物の違い』について解説しています。解説は高校化学・化学基礎を扱うウェブメディア『化学のグルメ』を通じて6年間大学受験に携わるプロの化学講師が執筆します。

有機物とは

C原子を含む化合物
Point!

無機物を理解するために、まずは有機物の定義を確認する。

数百年前は、生命に関連するものが有機物、それ以外のものが無機物と定義されていた。
しかし、1828年にドイツ人のウェーラーがシアン酸アンモニウムNH4OCNを加熱することで尿素CO(NH2)2を合成(NH4OCN → CO(NH2)2)してから、有機物(有機化合物)は炭素C原子を含む化合物の総称とされている。

PLUS+

例外として以下のものは(C原子を含むのにも関わらず)無機物に分類される。
・CO,CO2などの酸化物
・CaCO3などの炭酸塩
・KCNなどのシアノ化合物

無機物とは

有機物以外の物質
Point!

無機物とは有機物以外の物質である。
つまり、C原子が含まれない物質は全て無機物ということになる。

無機物を”単体”と”化合物”に分けて確認する。(単体と化合物について詳しくは単体と化合物(定義・違い・見分け方・一覧など)を参照)

単体

単体とは、一種類の元素から成る物質である。

定期テストや大学入試で頻出の単体としては同素体が存在するS・C・O・Pなどがある。

Cは有機物じゃないの?と思った人がいるかもしれないが、最初の有機物のところにあるように『有機物=炭素C原子を含む”化合物”の総称』である。つまり、有機物は基本的に”化合物”のみしか存在しないので、単体として存在しているものは全て無機物ということになる。炭素Cも例外ではなく、単体として存在しているときは無機物として扱われる。

化合物

無機物の化合物は次の4種類に分類される。

  • 酸化物
  • 水酸化物
  • オキソ酸

酸化物・水酸化物・オキソ酸・塩それぞれについて、1つずつ確認する。

酸化物

酸性/塩基性/両性
Point!

酸化物とは、その名の通り酸化された化合物である。

酸化物には酸性酸化物・塩基性酸化物・両性酸化物の3種類が存在しており、例としてはCO2・CaO・Al2O3などが挙げられる。

※酸化物について詳しくは酸性酸化物・塩基性酸化物・両性酸化物(違い・見分け方・一覧・反応など)を参照

水酸化物

OHを含む化合物
Point!

水酸化物とは、水酸化物イオンOHを含む化合物である。

例としては、NaOHやCa(OH)2などが挙げられる。

※水酸化物について詳しくは水酸化物(定義・一覧・酸化物との関係など)を参照

オキソ酸

O原子を含む酸
Point!

オキソ酸とは、酸素O原子を含む酸である。

例としては、H2SO4・HNO3・H2CO3などが挙げられる。

※オキソ酸について詳しくはオキソ酸(例・酸化力・一覧・強さ・構造・酸化数など)を参照

酸性塩/塩基性塩/正塩
Point!

とは、酸由来の陰イオンと塩基由来の陽イオンからなる化合物である。

塩には酸性塩・塩基性塩・正塩の三種類が存在する。

※塩について詳しくは酸性塩・塩基性塩・正塩(違い・見分け方・一覧など)を参照

まとめ

無機物に関する一問一答

問1

【】に当てはまる用語を答えよ。

炭素C原子を含む化合物の総称を【1】という。

【問1】解答/解説:タップで表示
解答:【1】有機物
問2

【】に当てはまる用語を答えよ。

有機物以外の物質はすべて【1】という。代表的な無機物としては【2】・【3】・【4】・【5】などが挙げられる。

【問2】解答/解説:タップで表示
解答:【1】無機物【2】酸化物【3】水酸化物【4】オキソ酸【5】塩(【2】〜【5】は順不同)


問3

【】に当てはまる用語を答えよ。

酸化された化合物を【1】という。【1】には【2】・【3】・【4】の3種類が存在する。

【問3】解答/解説:タップで表示
解答:【1】酸化物【2】酸性酸化物【3】塩基性酸化物【4】両性酸化物(【2】〜【4】は順不同)

酸化された化合物を酸化物という。
酸化物はその反応性によって3つのタイプに分類されており、酸と反応する塩基性酸化物、塩基と反応する酸性酸化物、酸・塩基両方と反応する両性酸化物がある。

※酸化物について詳しくは酸性酸化物・塩基性酸化物・両性酸化物(違い・見分け方・一覧・反応など)を参照

問4

【】に当てはまる用語を答えよ。

水酸化物イオンOHを含む化合物を【1】という。例としては、NaOHやCa(OH)2などが挙げられる。

【問4】解答/解説:タップで表示
解答:【1】水酸化物

水酸化物とは水酸化物イオンOHを含む化合物である。

※水酸化物について詳しくは水酸化物(定義・一覧・酸化物との関係など)を参照

問5

【】に当てはまる用語を答えよ。

酸素O原子を含む酸を【1】という。例としては、H2SO4・HNO3・H2CO3などが挙げられる。

【問5】解答/解説:タップで表示
解答:【1】オキソ酸

金属元素の酸化物の化学式に水の化学式を形式的に加えると対応する水酸化物の化学式になる。(詳しくは水酸化物(定義・一覧・酸化物との関係など)

では、非金属元素の場合はどうなるのだろうか。

非金属元素の酸化物は、酸素との共有結合により生じる。(詳しくは酸性酸化物・塩基性酸化物・両性酸化物(違い・見分け方・一覧・反応など)を参照)

その酸化物の多くは水と反応して酸を生じて酸性を示すので酸性酸化物である。
この場合、酸は分子内に酸素O原子を含んでおり、このような酸をオキソ酸(酸素酸)という。

※オキソ酸について詳しくはオキソ酸(例・酸化力・一覧・強さ・構造・酸化数など)を参照

問6

【】に当てはまる用語を答えよ。

酸由来の陰イオンと塩基由来の陽イオンからなる化合物を【1】という。【1】には【2】・【3】・【4】の3種類が存在する。

【問6】解答/解説:タップで表示
解答:【1】塩【2】酸性塩【3】塩基性塩【4】正塩(【2】〜【4】は順不同)
正塩 H+もOHも残っていない塩
酸性塩 酸由来のH+が残っている塩
塩基性塩 塩基由来のOHが残っている塩
Point!

中和の結果生成する“塩”には酸性塩・塩基性塩・正塩の3種類存在する。

酸性塩とは、酸由来のH+が残っている塩である。
具体例としては、NaHCO3(NaとCの間のH)・NaHSO4(NaとSの間のH)などが挙げられる。

塩基性塩とは、塩基由来のOHが残っている塩である。
具体例としては、CuCl(OH)・MgCl(OH)などが挙げられる。

正塩とは、余分なH+やOHが残っていない塩である。
具体例としては、NaCl・CaCl2・CH3COONaなどが挙げられる。

※塩について詳しくは酸性塩・塩基性塩・正塩(違い・見分け方・一覧など)を参照

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著者プロフィール

・化学のグルメ運営代表
・高校化学講師
・薬剤師
・デザイナー/イラストレーター

数百名の個別指導経験あり(過去生徒合格実績:東京大・京都大・東工大・東北大・筑波大・千葉大・早稲田大・慶應義塾大・東京理科大・上智大・明治大など)
2014年よりwebメディア『化学のグルメ』を運営
公式オンラインストアで販売中の理論化学ドリルシリーズ・有機化学ドリル等を執筆

著者紹介詳細