【プロ講師解説】このページでは『過マンガン酸カリウムを使った酸化還元滴定(仕組み・計算問題の解き方・指示薬・硫酸酸性にする理由など)』について解説しています。解説は高校化学・化学基礎を扱うウェブメディア『化学のグルメ』を通じて6年間大学受験に携わるプロの化学講師が執筆します。
酸化還元滴定の流れ
ここに、濃度未知の還元剤であるシュウ酸H2C2O4(無色)が入った容器があるとする。(シュウ酸は電離した状態で記載)
この容器に、既に濃度が分かっている酸化剤である過マンガン酸カリウムKMnO4(赤色)を滴下していく。
はじめのうちは、赤色の過マンガン酸カリウムKMnO4を入れてもシュウ酸H2C2O4と酸化還元反応を起こし、すぐに無色となる。
しかし、滴定を続けていくと…
あるとき急に赤色が消えなくなる。
これは、シュウ酸H2C2O4が無くなってこれ以上酸化還元反応を起こせなくなり、その結果、過マンガン酸カリウムKMnO4の赤色(正確にはKMnO4に含まれるイオンであるMnO4–の色)が残っているという原理である。
過マンガン酸カリウムを使った酸化還元滴定では、この色が消えなくなる点を滴定の終点とし、そこまでに滴下した過マンガン酸カリウムの量などを使って濃度未知の溶液(シュウ酸など)の濃度を求めていく。
PLUS+
過マンガン酸カリウムを使った酸化還元滴定の計算問題
問題
STEP1 | 2つの半反応式から反応式を作成する |
STEP2 | 「酸化剤が受け取るe–(mol)= 還元剤が放出するe–(mol)」を利用し未知の濃度を求める |
上のSTEPに従って説明していこう。
STEP1
まず、過マンガン酸カリウムKMnO4とシュウ酸H2C2O4の半反応式から酸化還元反応式をつくる。
※作り方がわからなかったら半反応式・酸化還元反応式(作り方・覚え方・問題演習など)を参照
STEP2
酸化還元反応では、還元剤の出した電子e–を酸化剤がそのまま受け取るので、以下の式が成り立つ。
したがって、今回の場合、次の式をつくることができる。
\underbrace{ 0.50(mol/L) × \frac{ 200 }{ 1000 }(L) }
_{ KMnO_{4}\text{ のmol }}
× 5
=
\underbrace{ x(mol/L) × \frac{ 500 }{ 1000 }(L) }
_{ H_{2}C_{2}O_{4}\text{ のmol }}
× 2 \\
↔︎ x=0.50(mol/L)
\]
KMnO4とH2C2O4の半反応式より、KMnO41molが受け取るe–は5mol、H2C2O41molから出るe–は2molなので、左辺に5、右辺に2をかけていることに注意しよう。
酸化還元滴定のワンポイント
ここからは、酸化還元滴定に関して受験生が疑問に感じるポイントを解決していこう。
過マンガン酸カリウムを使った酸化還元滴定を「酸性下」で行う理由
過マンガン酸カリウムの半反応式は、溶液の液性を酸性・中性・塩基性のどれにするかで変わってくる。
3つの反応式を比較すると、酸性のときに最も多くの電子e–を受け取っていることがわかる。多くの電子を受け取るということは「酸化剤として優秀」ということなので、過マンガン酸カリウムは酸性下で用いられる。
溶液を酸性にする際、硫酸を使用する理由
酸化還元滴定の問題では、必ずと言っていいほど「硫酸酸性下で実験を…」との記載が書かれている。溶液を酸性にする理由は上で述べたとおりだが、なぜ毎回“硫酸H2SO4”を用いるのか疑問に思う人も多いはず。
まず、酸として有名な塩酸HClは還元剤である。(Cl–→Cl2)
また、硝酸HNO3は酸化剤である。(希硝酸:HNO3→NO、濃硝酸:HNO3→NO2)
このように、多くの酸は酸化剤又は還元剤として働く。これに対して硫酸H2SO4は、酸化剤にも還元剤にもならないので、単にH+を供給し酸化還元反応を促進するためだけに働いてくれる。これが、酸化還元滴定で硫酸H2SO4を用いる理由である。
酸化還元滴定に関する演習問題
濃度不明のシュウ酸水溶液の濃度を求めるために過マンガン酸カリウム水溶液による滴定を行った。濃度不明のシュウ酸水溶液を【1】を用いて量りとり、【2】に移した。これに硫酸を加えて硫酸酸性にしたのち、濃度既知の過マンガン酸カリウム水溶液を【3】に入れて徐々に滴下していった。完全に反応が終わったとき、【2】中にある溶液は【4】色になっていた。
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・化学のグルメ運営代表
・高校化学講師
・薬剤師
・デザイナー/イラストレーター
数百名の個別指導経験あり(過去生徒合格実績:東京大・京都大・東工大・東北大・筑波大・千葉大・早稲田大・慶應義塾大・東京理科大・上智大・明治大など)
2014年よりwebメディア『化学のグルメ』を運営
公式オンラインストアで販売中の理論化学ドリルシリーズ・有機化学ドリル等を執筆
著者紹介詳細