写真の現像(ハロゲン化銀の利用)

目次

はじめに

【プロ講師解説】このページでは『写真の現像(ハロゲン化銀の利用)』について解説しています。


写真の原理

  • フィルム写真の原理について、次の手順で解説する。

●STEP1
感光
●STEP2
現像
●STEP3
定着

STEP
感光

写真のフィルムには感光剤として臭化銀AgBrが塗布されており、このフィルムに光が当たるとAgBrの感光性によって、銀Ag原子が遊離する。

\[ \mathrm{2AgBr→2Ag+Br_{2}} \]

この反応が複数回起こることで、10~100個程度のAg原子が集まった潜像核ができる。

STEP
現像

感光したフィルムをヒドロキノンなどの還元剤に浸すと、潜像核を中心にAgBrの還元が進み、銀の粒子がさらに成長する(=現像)。

現像の停止

  • 現像の”停止”について補足する。
  • 現像に用いられる還元剤であるヒドロキノンは、次のように反応する。
  • ある程度現像が進んだとき、フィルムを酢酸水溶液に浸すことで反応を止める(=停止する)ことができる。
  • この仕組みは、ルシャトリエの原理に基づいたものである。
  • 上記のヒドロキノンの反応で、水素イオンHが生成する点に注目する。Hが生成するということは、ルシャトリエの原理により、塩基性下で反応が進みやすい。したがって、酢酸水溶液を加えることで溶液の酸性度を高め、反応を停止することができる。

参考:ルシャトリエの原理(温度・圧力変化・希ガスを加えた場合など)

STEP
定着

フィルム上に残ったAgBrを放置すると、光を当てたときに感光する可能性がある。
したがって、STEP2までで反応しなかったAgBrをチオ硫酸ナトリウムNa2S2O3に浸し、可溶性の錯イオンとして除去する。

\[ \mathrm{AgBr+2S_{2}O_{3}^{2-}}→\underbrace{\mathrm{ [Ag(S_{2}O_{3})_{2}]^{3-}} }
_{ \text{ 可溶性の錯イオン }}
\mathrm{+Br^{-}} \]

この段階で水洗いをすると、光の当たった場所のみ黒く色が付いた陰画(ネガ)が得られる。
なお、AgBrは難溶性の塩であり、水で溶かすことはできない。

参考:イオン分析を行う上で必要な知識まとめ

定着が完了するまでは感光する能力が残っているため、暗室(あんしつ)とよばれる、光を遮断することができる部屋で作業を行う必要があります。

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著者情報

元講師、薬剤師、イラストレーター
数百名の中高生向け指導経験あり(過去生徒合格実績:東工大・東北大・筑波大・千葉大・岡山大・早稲田大・慶應義塾大・東京理科大・上智大・明治大など)。
2014年よりwebメディア『化学のグルメ』を運営
公式オンラインストアで販売中の理論化学ドリルシリーズ・有機化学ドリル等を執筆
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