【塩の加水分解】塩の液性が酸性・塩基性になる理由

目次

はじめに

【プロ講師解説】このページでは『塩の液性(見分け方・演習問題など)』について解説しています。


塩の加水分解とは

  • 強酸と弱塩基からできた塩を水に溶かした場合、その水溶液の液性は酸性に、弱酸と強塩基からできた塩を水に溶かした場合、水溶液の液性は塩基性になる。
  • 参考:塩の液性(見分け方・演習問題など)
  • これは「塩の加水分解(水H2Oとの反応)」が原因である。
  • ここでは、強酸と弱塩基からできた塩として塩化アンモニウムNH4Cl、弱酸と強塩基からできた塩として酢酸ナトリウムCH3COONaを使って解説する。

塩化アンモニウムNH4Clの加水分解

  • NH4Clの加水分解は次の反応式で表すことができる。

\[ \mathrm{NH_{4}Cl + H_{2}O ⇄ NH_{3}+ H_{2}O + HCl} \]

  • NH4Cl(塩)とHCl(強酸)は電離度が大きいため完全に電離するが、H2OとNH3(弱塩基)は電離度が小さくほとんど電離しない。したがって、次のように考えることができる。

\[ \begin{align}&\mathrm{NH_{4}^{+} + \cancel{Cl^{-}} + H_{2}O ⇄ NH_{3} +} \underbrace{ \mathrm{H_{2}O + H^{+} }}
_{ \mathrm{H_{3}O^{+}} } + \cancel{\mathrm{Cl^{-}}} \\
&\mathrm{↔︎ NH_{4}^{+} + H_{2}O ⇄ NH_{3} +} \underbrace{ \mathrm{H_{3}O^{+}} }
_{ \text{ 酸性 } } \end{align}\]

  • Clは両辺に存在するので消すことができる。また、H2OとHが組み合わさってできるH3Oは酸性を示すため、結果的に水溶液の液性は酸性となる。

酢酸ナトリウムCH3COONaの加水分解

  • CH3COONaの加水分解は次の反応式で表すことができる。

\[ \mathrm{CH_{3}COONa + H_{2}O ⇄ CH_{3}COOH + NaOH } \]

  • CH3COONa(塩)とNaOH(強塩基)は電離度が大きいため(ほぼ)完全に電離するが、H2OとCH3COOH(弱酸)は電離度が小さく(ほぼ)電離しない。したがって、次のように考えることができる。

\[ \begin{align}&\mathrm{CH_{3}COO^{-} + \cancel{Na^{+}} + H_{2}O ⇄ CH_{3}COOH + \cancel{Na^{+}} + OH^{-} \ } \\
&\mathrm{↔︎ CH_{3}COO^{-} + H_{2}O ⇄ CH_{3}COOH +} \underbrace{ \mathrm{OH^{-}} }
_{ \text{ 塩基性 } }\end{align}\]

  • Na+は両辺に存在するので消すことができる。また、OHが存在するため結果的に水溶液の液性は塩基性となる。

【新課程対応】化学の計算ドリル大好評発売中!

高校化学・化学基礎の計算問題が苦手な人に向けた計算ドリルを発売しました。豊富な問題数で、入試頻出の計算問題の解き方を身につけることができます。

【新課程対応】無機化学ドリル発売中!

無機化学の知識を総ざらいできるオリジナル問題集ができました。解答・解説編には入試頻出事項が一通りまとめられており、まとめノート/参考書としての役割も果たします。

【新課程対応】有機化学ドリル発売中!

有機化学に関する入試頻出事項を演習することのできるオリジナル問題集が紙の本になりました。暗記項目だけではなく、計算問題や思考力が問われる問題についても触れています。

著者情報

元講師、薬剤師、イラストレーター
数百名の中高生向け指導経験あり(過去生徒合格実績:東工大・東北大・筑波大・千葉大・岡山大・早稲田大・慶應義塾大・東京理科大・上智大・明治大など)。
2014年よりwebメディア『化学のグルメ』を運営
公式オンラインストアで販売中の理論化学ドリルシリーズ・有機化学ドリル等を執筆
気に入ったらシェアしてね!
目次