【プロ講師解説】このページでは『ビスコースレーヨンと銅アンモニアレーヨン(合成法/作り方・原理・構造式・具体的な用途など)』について解説しています。解説は高校化学・化学基礎を扱うウェブメディア『化学のグルメ』を通じて6年間大学受験に携わるプロの化学講師が執筆します。
レーヨンとは
主に木材などから不純物のリグニンなどを取り除いて得られるセルロース(“パルプ”と呼ばれる)は、繊維としては非常に短く、そのまま衣料に用いることは困難である。
したがって、このセルロースに化学的な処理を施して一度溶かしたのち、再び(欲しい長さの)セルロースに戻して使われることが多い。
このように、人の手によって新たに作られるセルロースを「レーヨン(再生繊維)」という。
ビスコースレーヨン
ビスコースレーヨンの作り方は「セルロースを溶解する段階」と「セルロース(レーヨン)を再生する段階」に分けることができる。
まずは、セルロースを溶解する段階から確認していく。
セルロースの溶解
STEP1 | セルロースを濃水酸化ナトリウム水溶液と反応させる |
STEP2 | 二硫化炭素を加えて反応させる |
STEP3 | 希水酸化ナトリウム水溶液に溶かす |
STEP1
セルロースのヒドロキシ基(-OH)は酸として振舞うことができるため、濃NaOHにより中和される。
このとき生成する物質はアルカリセルロースと呼ばれる。
STEP2
アルカリセルロースの-ONaが二硫化炭素(S=C=S)に付加する。
このとき生成する物質はセルロースキサントゲン酸ナトリウムという。
STEP3
セルロースキサントゲン酸ナトリウムを希NaOHaqに溶解すると、赤褐色透明で粘性の強いコロイド溶液(ビスコース)ができる。
セルロース(レーヨン)の再生
ビスコースから希硫酸中でセルロースを繊維状に析出させると、ビスコースレーヨンができる。
ちなみに、ビスコースから膜状に再生したものはセロハンと呼ばれる。
銅アンモニアレーヨン
銅アンモニアレーヨンの作り方も「セルロースを溶解する段階」と「セルロース(レーヨン)を再生する段階」に分けることができる。
「セルロースを溶解する段階」から確認していく。
セルロースの溶解
まず、セルロースをシュバイツァー試薬で溶かす。(シュバイツァー試薬を使ったセルロースの溶解について詳しくはシュバイツァー試薬や二硫化炭素を用いてセルロースを溶かす方法を参照)
セルロース(レーヨン)の再生
シュバイツァー試薬に溶けたセルロースを希硫酸中で析出させると、銅アンモニアレーヨンが得られる。
演習問題
問1
人の手によって新たに作られたセルロースを【1】という。
問2
ビスコースレーヨンを作る準備として、はじめにセルロースを溶解する必要がある。セルロースの溶解では、まずセルロースを濃NaOH水溶液と反応させる。このとき生成する物質は【1】という。
次に、二硫化炭素を加えて反応させる。このとき生成する物質は【2】という。
最後に、【2】を希NaOH水溶液に溶解すると、赤褐色透明で粘性の強いコロイド溶液(【3】)ができる。
溶解したセルロースを再生してビスコースレーヨンを作る際、【3】から希硫酸中でセルロースを【4(繊維or膜)】状に析出させると、ビスコースレーヨンができる。
ちなみに、【3】からセルロースを【5(繊維or膜)】状に再生したものはセロハンと呼ばれる。
問3
銅アンモニアレーヨンを作る際は、まずセルロースを【1】試薬で溶かす。
【1】試薬に溶けたセルロースを【2】中で析出させると、銅アンモニアレーヨンが得られる。
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・化学のグルメ運営代表
・高校化学講師
・薬剤師
・デザイナー/イラストレーター
数百名の個別指導経験あり(過去生徒合格実績:東京大・京都大・東工大・東北大・筑波大・千葉大・早稲田大・慶應義塾大・東京理科大・上智大・明治大など)
2014年よりwebメディア『化学のグルメ』を運営
公式オンラインストアで販売中の理論化学ドリルシリーズ・有機化学ドリル等を執筆
著者紹介詳細