【プロ講師解説】【多糖類】デンプン(アミロース・アミロペクチン)/セルロースの構造・還元性・加水分解などのところでやったように、セルロースはほとんどの溶媒に溶けません。しかし、全く溶かす方法がないというわけではなく、特殊な方法を用いて溶かすことは可能。このページでは『セルロースを溶かす方法である「シュバイツァー試薬を用いる方法」と「水酸化ナトリウムと二硫化炭素(CS2)を用いる方法」』について解説しています。解説は高校化学・化学基礎を扱うウェブメディア『化学のグルメ』を通じて6年間大学受験に携わるプロの化学講師が執筆します。

セルロースを溶かす方法

セルロースを溶かす方法には『シュバイツァー試薬を用いる方法』と『水酸化ナトリウムと二硫化炭素を用いる方法』が存在する。

シュバイツァー試薬を用いる方法

シュバイツァー試薬はアンモニア性水酸化銅(Ⅱ)溶液である。
セルロースのヒドロキシ基は僅かに電離してH+を出し、酸の役割を果たしている。

\[
R-O-H⇆R-O^{-}+H^{+}
\]

シュバイツァー試薬に含まれる遷移金属イオンであるCu2+は、錯イオンを作りやすい性質がある。
したがって、セルロースの-Oと配位結合して錯イオンを形成し、セルロースが溶解する。

水酸化ナトリウムと二硫化炭素を用いる方法

セルロースを濃NaOH水溶液に入れると、半透明のアルカリセルロースとなる。
これに適切な処理を施したのち、ニ硫化炭素(CS2)を加えると、黄〜黄赤色のゼリー状物質(セルロースキサントゲン酸ナトリウム)が得られる。
これを希NaOH水溶液に溶かすと、透明感のある赤褐色で粘性をもつコロイド溶液(ビスコース)となる。(セルロースは溶けた!)

演習問題

問1

【】に当てはまる用語を答えよ。

シュバイツァー試薬中の遷移金属イオンである【1】は、錯イオンを作りやすい性質がある。
したがって、セルロースと配位結合して錯イオンを形成し、セルロースが溶解する。
【問1】解答/解説:タップで表示
解答:【1】銅(Ⅱ)イオンCu2+

シュバイツァー試薬に含まれる遷移金属イオンであるCu2+は、錯イオンを作りやすい性質がある。
したがって、セルロースの-Oと配位結合して錯イオンを形成し、セルロースが溶解する。

問2

【】に当てはまる用語を答えよ。

セルロースを濃NaOH水溶液に入れると半透明の【1】となる。
これに適切な処理を施し【2】を加えると黄〜黄赤色のゼリー状物質(【3】)が得られる。
これを希NaOH水溶液に溶かすと、透明感のある赤褐色で粘性をもつコロイド溶液(【4】)となる。
【問2】解答/解説:タップで表示
解答:【1】アルカリセルロース【2】ニ硫化炭素(CS2)【3】セルロースキサントゲン酸ナトリウム【4】ビスコース

セルロースを濃NaOH水溶液に入れると、半透明のアルカリセルロースとなる。
これに適切な処理を施したのち、ニ硫化炭素(CS2)を加えると、黄〜黄赤色のゼリー状物質(セルロースキサントゲン酸ナトリウム)が得られる。
これを希NaOH水溶液に溶かすと、透明感のある赤褐色で粘性をもつコロイド溶液(ビスコース)となる。(セルロースは溶けた!)

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著者プロフィール

・化学のグルメ運営代表
・高校化学講師
・薬剤師
・デザイナー/イラストレーター

数百名の個別指導経験あり(過去生徒合格実績:東京大・京都大・東工大・東北大・筑波大・千葉大・早稲田大・慶應義塾大・東京理科大・上智大・明治大など)
2014年よりwebメディア『化学のグルメ』を運営
公式オンラインストアで販売中の理論化学ドリルシリーズ・有機化学ドリル等を執筆

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