溶解度積(計算問題・単位・溶解度との関係・沈殿生成判定など)

目次

はじめに

【プロ講師解説】このページでは『溶解度積(計算問題・単位・溶解度との関係・沈殿生成判定など)』について解説しています。


溶解度積とは

  • 水に溶けにくい電解質MmAaは飽和溶液中で次のような平衡状態になっている。

\[ \mathrm{M_{m}A_{a}(固) ⇆ mM^{a+} + aA^{m-}} \]

  • このとき、次の式が成り立つ。

\[ K = \mathrm{\frac{ [M^{a+}]^{m}[A^{m-}]^{a} }{ [M_{m}A_{a}(固)] } }\]

  • MmAaは固体のため[MmAa(固)]は一定とみなすことができる。したがって、[MmAa(固)]を移項すると、次のようになる。

\[ \underbrace{\mathrm{[M_{m}A_{a}(固)]}×K}_{ 一定 } =\mathrm{[M^{a+}]^{m}[A^{m-}]^{a}} \]

  • ここで、定数(一定)である[MmAa(固)]×Kを改めてKspと定義する。

\[ K_{sp} =\mathrm{[M^{a+}]^{m}[A^{m-}]^{a} }\]

  • このKsp溶解度積という。

塩化銀AgClの溶解度積

  • ちなみに、テスト頻出の「塩化銀AgCl」の溶解度積は次のように導くことができる。
  • 塩化銀AgClを水に溶解させると一部のAgClが溶け残った水溶液ができ、溶解平衡の状態に達した。この溶解平衡の平衡定数K(AgCl)は次のように表される。

\[ K(\mathrm{AgCl})=\mathrm{\frac{ [Ag^{+}][Cl^{-}] }{ [AgCl(固)] } }\]

  • [AgCl(固)]を一定とみなし新しい定数としてKsp(AgCl)を次のように定義する。

\[ K_{\mathrm{sp}}(\mathrm{AgCl})=\mathrm{[Ag^{+}][Cl^{-}] }\]

  • このKsp(AgCl)が塩化銀の溶解度積となる。

溶解度積の計算問題

  • 溶解度積に関する問題として、テストで頻出の「溶解度積を使って溶解度を求める問題」と「溶解度積を使って沈殿生成の有無を判定する問題」の解き方を解説する。

溶解度積を使って溶解度を求める問題

問題

塩化銀AgClの溶解度を求めよ。ただし、AgClの溶解度積は4.0×10ー10(mol/L)2とする。

  • 溶けるAgClをx(mol/L)とすると、Ag+、Clの濃度はどちらもx(mol/L)となる。
  • したがって、次のような式を立てることができる。

\[ \begin{align}&K_{\mathrm{sp}}(\mathrm{AgCl}) = \mathrm{[Ag^{+}][Cl^{-}]}\\
&\leftrightarrow 4.0×10^{-10} = x × x\\
&\therefore x = 2.0×10^{-5}(\mathrm{mol/L})\end{align} \]

問題

Ag2CrO4の溶解度を求めよ。ただし、Ag2CrO4の溶解度積は3.2×10ー11(mol/L)3とする。

  • 溶けるAg2CrO4をx(mol/L)とすると、Agの濃度は2x(mol/L)、CrO42ーの濃度はx(mol/L)となる。
  • したがって、次のような式を立てることができる。

\[ \begin{align}&K_{\mathrm{sp}}(\mathrm{Ag_{2}CrO_{4}}) = \mathrm{[Ag^{+}]^{2}[CrO_{4}^{2-}]}\\
&\leftrightarrow 3.2×10^{-11} = (2x)^{2} × x\\
&\therefore x = 2.0×10^{-4}(\mathrm{mol/L}) \end{align}\]

溶解度積を使って沈殿生成の有無を判定する問題

問題

Agの濃度が4.0×10ー5mol/L、Clの濃度が5.0×10ー6mol/Lのとき、沈殿が生成するか判断せよ。AgClの溶解度積は1.8×10ー10(mol/L)2とする。

  • 溶解度積を使った沈殿生成判定は次の2STEPで行う。

●STEP1
仮の溶解度積(\(\widetilde{ K_{\mathrm{sp}} }\))を求める。

●STEP2
\(\widetilde{ K_{\mathrm{sp}} }\)と溶解度積(\(K_{\mathrm{sp}}\))を比較する。
\(\widetilde{ K_{\mathrm{sp}} }\)>\(K_{\mathrm{sp}}\) 沈殿が生成
\(\widetilde{ K_{\mathrm{sp}} }\)=\(K_{\mathrm{sp}}\) 沈殿は生成しない
\(\widetilde{ K_{\mathrm{sp}} }\)<\(K_{\mathrm{sp}}\) 沈殿は生成しない

STEP
仮の溶解度積(\(\widetilde{ K_{\mathrm{sp}} }\))を求める。

まずは、仮の溶解度積(\(\widetilde{ K_{\mathrm{sp}} }\))を求める。

\[ \begin{align} 仮の溶解度積(\widetilde{ K_{\mathrm{sp}} }) &=\mathrm{[Ag^{+}][Cl^{-}]}\\
&=4.0×10^{-5}×5.0×10^{-6}\\
&=2.0×10^{-10}(\mathrm{mol/L})^{2} \end{align} \]

STEP
\(\widetilde{ K_{\mathrm{sp}} }\)と溶解度積(\(K_{\mathrm{sp}}\))を比較する。

次に、\(\widetilde{ K_{\mathrm{sp}} }\)と溶解度積(\(K_{\mathrm{sp}}\))を比較し、沈殿生成の有無を決定する。

\(\widetilde{ K_{\mathrm{sp}} }\)と\(K_{\mathrm{sp}}\)の比較沈殿
仮の溶解度積>溶解度積生成する
仮の溶解度積=溶解度積(ギリ)生成しない
仮の溶解度積<溶解度積生成しない

仮の溶解度積が(問題文で与えられている)溶解度積を超えている場合のみ沈殿が生成する。

今回の問題文中にあるAgClの溶解度積は1.8×10ー10(mol/L)2で、求めた仮の溶解度積が2.0×10ー10(mol/L)2なので…

\[ \underbrace{ 2.0×10^{-10} }_{ 仮の溶解度積 } > \underbrace{ 1.8×10^{-10} }_{ 真の溶解度積 } \]

仮の溶解度積>真の溶解度積となり沈殿は生成する。


演習問題

化学のグルメでは、高校化学・化学基礎の一問一答問題を公開しています。問題一覧は【スマホで出来る】一問一答(高校化学・化学基礎)でご覧下さい。

問1

飽和溶液において、沈殿の一部が溶解し平衡状態になることを【1】という。

解答/解説:タップで表示

解答:【1】溶解平衡

飽和溶液において、沈殿の一部が溶解し平衡状態になることを溶解平衡という。

問2

塩化銀AgClを水に溶解させると、一部のAgClが溶け残った水溶液ができ、溶解平衡の状態に達した。この溶解平衡の平衡定数K(AgCl)は次のように表される。

\(K(\mathrm{AgCl}) = \frac{[【1】][【2】]}{ [\mathrm{AgCl}(固)]}\)

[AgCl(固)]を一定とみなし、新しい定数としてKs(AgCl)を次のように定義する。

\(K_{\mathrm{s}}(\mathrm{\mathrm{AgCl}}) =[【1】][【2】]\)

このKs(AgCl)を(塩化銀の)【3】という。

解答/解説:タップで表示

解答:【1】Ag【2】Cl【3】溶解度積(【1】・【2】は順不同)

問3

塩化銀AgClの溶解度を求めよ。ただし、AgClの溶解度積は4.0×10-10(mol/L)2とする。

解答/解説:タップで表示

解答:2.0×10ー5(mol/L)

溶けるAgClをx(mol/L)とすると、Ag+、Clの濃度はどちらもx(mol/L)となる。

したがって、次のような式を立てることができる。

\[ \begin{align}&K_{\mathrm{sp}}(\mathrm{AgCl}) = \mathrm{[Ag^{+}][Cl^{-}]}\\
&\leftrightarrow 4.0×10^{-10} = x × x\\
&\therefore x = 2.0×10^{-5}(\mathrm{mol/L})\end{align} \]

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著者情報

元講師、薬剤師、イラストレーター
数百名の中高生向け指導経験あり(過去生徒合格実績:東工大・東北大・筑波大・千葉大・岡山大・早稲田大・慶應義塾大・東京理科大・上智大・明治大など)。
2014年よりwebメディア『化学のグルメ』を運営
公式オンラインストアで販売中の理論化学ドリルシリーズ・有機化学ドリル等を執筆
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