陰イオンの定性分析(ハロゲン化物/硫酸/炭酸/クロム酸/二クロム酸イオン)

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はじめに

【プロ講師解説】このページでは『陰イオンの定性分析(ハロゲン化物/硫酸/炭酸/クロム酸/二クロム酸イオン)』について解説しています。


陰イオンの定性分析とは

  • 陰イオンが複数含まれている溶液に対して様々な操作を行うことで、その溶液にどんな種類の陰イオンが含まれているのかを見極めていく分析法を陰イオンの定性分析という。
  • ここでは、ハロゲン化物イオン(Cl・Br・I)・硫酸イオン(SO42ー)・炭酸イオン(CO32ー)・クロム酸イオン(CrO42ー)・ニクロム酸イオン(Cr2O72ー)などの陰イオンに注目して、陰イオンの定性分析について解説する。

ハロゲン化物イオン

  • ハロゲン化物イオンであるClやBr、Iを検出するためには硝酸銀AgNO3水溶液(Ag)を加える。

\[ \mathrm{Cl^{-} + Ag^{+} → AgCl} \]

  • 結果として生じたハロゲン化銀の沈殿に光を当てると、次の酸化還元反応が起こり沈殿が(Agの色である)黒紫色に変化する(ハロゲン化銀のこの性質を感光性という)。

\[ \mathrm{2AgCl → 2Ag + Cl_{2}} \]

  • この色の変化を利用してハロゲン化物イオンの検出を行うことができる。

硫酸イオン・炭酸イオン

  • 硫酸イオン(SO42ー)や炭酸イオン(CO32ー)を検出するためには、塩化カルシウムCaCl2水溶液を滴下する。

\[ \begin{align}&\mathrm{Ca^{2+} + SO_{4}^{2-} → CaSO_{4}}\\
&\mathrm{Ca^{2+} + CO_{3}^{2-} → CaCO_{3}} \end{align}\]

  • 結果として生じたCaSO4やCaCO3は白色沈殿として検出できる。
  • また、水溶液中にCaSO4とCaCO3の両方が含まれる可能性がある場合(両方白色沈殿でこのままだと見分けがつかないので)次の方法で判断する。

\[ \begin{align}&\mathrm{CaSO_{4} + 2HCl → 反応しない}\\
&\mathrm{CaCO_{3} + 2HCl → CaCl_{2} + H_{2}O + CO_{2}}\end{align} \]

  • CaCO3の方は、炭酸イオン由来の塩であるため、強酸(今回の例ではHCl)を加えると上のような弱酸遊離反応を引き起こす。CaSO4の方は、硫酸イオン由来の塩であるため、強酸を加えてもなにも起こらない。

クロム酸イオン・ニクロム酸イオン

  • CrO42ー(黄色)とCr2O72ー(赤橙色)は水溶液中で次のような平衡状態にある。

\[ \mathrm{2CrO_{4}^{2-} + 2H^{+} → Cr_{2}O_{7}^{2-} + H_{2}O} \]

  • 溶液中が酸性になった場合、ルシャトリエの原理により平衡はHを減らす方向、つまり右側に移動する。このとき、結果的にCr2O72ーが増えることになるので溶液は赤橙色になる。
  • 反対に、溶液中が塩基性になった場合、ルシャトリエの原理により平衡はHを増やす方向、つまり左側に移動する。このとき、結果的にCrO42ーが増えることになるので溶液は黄色になる。
  • このように、クロム酸イオン・ニクロム酸イオンの存在は、溶液の液性を変えたときの色の変化で確認できる。

参考:ルシャトリエの原理(温度・圧力変化・希ガスを加えた場合など)

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著者情報

元講師、薬剤師、イラストレーター
数百名の中高生向け指導経験あり(過去生徒合格実績:東工大・東北大・筑波大・千葉大・岡山大・早稲田大・慶應義塾大・東京理科大・上智大・明治大など)。
2014年よりwebメディア『化学のグルメ』を運営
公式オンラインストアで販売中の理論化学ドリルシリーズ・有機化学ドリル等を執筆
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