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相対質量・原子量・分子量・式量の定義、求め方、計算問題
はじめに
【プロ講師解説】このページでは『相対質量・原子量・分子量・式量の定義、求め方、計算問題』について解説しています。
相対質量
- 原子1個の質量は極めて小さいため、計算をするときに扱いづらい。そこで、質量をより扱いやすくするために考えられた概念が、相対質量である。
- 12Cの質量を12と定め、これを基準に他の原子の質量を相対的に比べたものを相対質量という。
炭素(12C)の質量=12
- 昔、賢い人が「原子の質量はそのままじゃ小さすぎて使いづらいから、炭素(12C)の質量を12と決め、他の原子はそれと比べてどれくらい重い(軽い)かどうかで表せばいいんじゃない?」と考えた。
- 例えば、水素(1H)の質量は12Cの1/12なので「1」、酸素(16O)の質量は12Cの4/3なので「16」となる。
相対質量の求め方
- 相対質量は、基準である炭素(12C)の相対質量12に、その原子と炭素との質量の比をかけると求めることができる。
相対質量=12×炭素とその原子の質量比
- 例えば次の問題を見てみよう。
水素(1H)の質量は炭素の1/12である。このとき、1Hの相対質量を求めよ(C=12)。
- 問題に「1Hの質量は炭素の1/12」とあるため、炭素の相対質量である12に1/12をかける。
\[ 12 × \frac{ 1 }{ 12 } = 1 \]
- よって、水素の相対質量は1となる。
原子量
- 各同位体の相対質量にそれぞれの存在比をかけて足した値を原子量という。
- 元素の多くは同位体が存在するため、それぞれの相対質量にその存在比をかけて最後に足すわけである。
- 文字だけでは分かりにくいため、炭素を例に実際計算してみよう。
存在比から原子量を求める問題
炭素原子の2つの同位体12C(相対質量=12.0)、13C(相対質量=13.0)の存在比が、 それぞれ98.9%、1.1%であるとき、炭素の原子量を求めよ。
- 同位体の相対質量に、それぞれの存在比をかけて足すと、原子量を求めることができる。
\[ \underbrace{12.0 × \frac{ 98.9 }{ 100 } }
_{ ^{ 12 }\text{ C }} +
\underbrace{13.0 × \frac{ 1.1 }{ 100 } }
_{ ^{ 13 }\text{ C }} = 12.011 \]
- ちなみに、このような原子量計算をするときの有名な工夫がある。
\[ \begin{align}&12.0 × \frac{ 98.9 }{ 100 } + 13.0 × \frac{ 1.1 }{ 100 } \\
&= 12.0 × \frac{ 98.9 }{ 100 } + (12.0+1.00) × \frac{ 1.1 }{ 100 } \\
&= 12.0 × \frac{ 98.9 }{ 100 } + 12.0 × \frac{ 1.1 }{ 100 } + 1.00 × \frac{ 1.1 }{ 100 }\\
&= 12.0 × (\frac{ 98.9 }{ 100 } + \frac{ 1.1 }{ 100 }) + 1.00 × \frac{ 1.1 }{ 100 }\\
&= 12.0 × 1 + 1.00 × \frac{ 1.1 }{ 100 }\\
&= 12.0 + 0.011\\
&= 12.011\end{align} \]
原子量から存在比を求める問題
塩素原子の原子量が35.5のとき、塩素原子の2つの同位体35Cl(相対質量=35.0),37Cl(相対質量=37.0)の存在比をそれぞれ求めよ。
- こちらも同じように、「同位体の相対質量に、それぞれの存在比をかけて足すと、原子量を求めることができる」ことを利用して解く。
- 片方の存在比(%)をxとすると、全部で100(%)だからもう片方は100ーx(%)と考えられる。
\[ \underbrace{35.0 × \frac{ x }{ 100 } }
_{ ^{ 35 }\text{ Cl }} +
\underbrace{37.0 × \frac{ 100-x }{ 100 } }
_{ ^{ 37 }\text{ Cl }} = 35.5 \]
- この式をxについて解くと、x=0.75となるため…
\[ \begin{align}&^{35}\mathrm{Cl} = 75(\%) \\
&^{37}\mathrm{Cl} = 25(\%)\end{align} \]
基本的に原子量に単位はありません。ただし、計算で使用する際には「g/mol」という単位をつけて計算する場合があります。
【モル計算】単位を駆使!物質量molが絡む問題の解法(原子量・体積・アボガドロ数など)
分子量
- 分子を構成している原子の原子量の和を分子量という。
- 例えば、水(H2O)の分子量は、水素の原子量「1」と酸素の原子量「16」を使って、次のように表す。
\[ 1×2 + 16×1 = 18 \]
- 水素の原子量に2を、酸素の原子量に1をかけているのは、水分子中に水素原子は2個、酸素原子は1個あるためである。
式量
- 組成式またはイオン式で表される物質を構成している原子の原子量の和を式量という。
- 例として「NaCl」の式量を求める。Naの原子量23.0、Clの原子量35.5を用いると…
\[ 23.0×1 + 35.5×1 = 58.5 \]
- Naの原子量とClの原子量にそれぞれ1をかけているのは、NaClという式の中のNaとClの比が「1:1」だからである。