はじめに
燃料電池に関する問題は、近年入試出題頻度急上昇中。このページでは、燃料電池の仕組みから各極の反応式までイラストを用いて1から丁寧に解説していく。ぜひこの機会に燃料電池をマスターして、他の受験生と差をつけよう!
燃料電池とは
燃料電池とは、水素と酸素を利用して電気エネルギーを得る発電装置である。
高校化学で知っておいてほしい燃料電池は「リン酸型燃料電池」と「アルカリ型燃料電池」の2種類。順番にみていこう。
リン酸型燃料電池
仕組み
STEP1 | 負極で、水素(H2)が電子(e–)を離して水素イオン(H+)となる |
STEP2 | 放出されたe–は銅線を、H+はH3PO4を介して正極側に伝わっていく |
STEP3 | 正極で、酸素(O2)がこれらと反応し水(H2O)が生成する |
リン酸型燃料電池の仕組みを、この3STEPに従って解説していく。
STEP1
余ったH2は外に排出される。
STEP2
この時、電子が通過することで(電流が発生して)豆電球が点灯していることに注目しよう。
STEP3
余ったO2は外に排出される。
各極における反応
正極、負極のそれぞれで、どのような反応が起きているのかまとめておこう。
正極
\mathrm{ O_{2} + 4H^{+} + 4e^{-} → 2H_{2}O }
\]
O2がH+とe–を受け取りH2Oとなる。
負極
\mathrm{ H_{2} → 2H^{+} + 2e^{-}}
\]
水溶液中のH2がe–を放出してH+となっている。
全体
正極と負極の反応式をまとめて1つにしてみよう。
電子の数を合わせて消すために、上の式に×2していることに注意しよう。
\mathrm{ 2H_{2} + O_{2} → 2H_{2}O}
\]
これが、リン酸型燃料電池の全体式である。
アルカリ型燃料電池
アルカリ型燃料電池は少し複雑なので負極と正極の反応に分けて説明し、その後まとめることにしよう。
負極の反応
STEP1 | 負極で、水素(H2)が電子(e–)を離して水素イオン(H+)となる |
STEP2 | 放出されたe–は銅線を、H+はH3PO4を介して正極側に伝わっていく |
STEP3 | KOHから電離したOH–がH+と反応し、H2Oが生成する |
まずは負極から。
STEP1
余ったH2は外に排出される。
STEP2
この時、電子が通過することで(電流が発生して)豆電球が点灯していることに注目しよう。
STEP3
ちなみに、反応式はどうなるのかというと、H2からH+が生成する式である
\mathrm{ H_{2} → 2H^{+} + 2e^{-}}
\]
に、(溶液中に存在している)OH–を足し合わせれば良い。
両辺に2OH–を足すと、
となり、負極の反応式は、
\mathrm{ H_{2} + 2OH^{-} → 2H_{2}O + 2e^{-}}
\]
となる。
また、生成したH2Oの一部は排出され、残りは電解液中に残される。
正極の反応
次は正極での反応を見ていこう。
負極から流れてきたe–と上の反応(H2+2OH–→2H2O+2e–)で発生して電解液中に取り残されていたH2Oが、正極から吹き込まれたO2と反応し、結果としてOH–が生成する。
以上のことを踏まえると、正極の反応式は、
\mathrm{ O_{2} + 2H_{2}O + 4e^{-} → 4OH^{-}}
\]
となる。
アルカリ型燃料電池まとめ
上でやってきたことをまとめると、以下のようになる。
「真ん中でサイクルが出来ている」ということがポイント。
正極で使うH2Oを負極が、負極で使うOH-を正極が作り出しているね。このおかげで、燃料電池は連続的にエネルギーを生み出すことが出来ている。
最後に、アルカリ型燃料電池の全体式を作っておこう。
上で説明した正極と負極の反応式をまとめると、次のようになる。
電子の数を合わせて消すために、上の式に×2していることに注意しよう。
\mathrm{ 2H_{2} + O_{2} → 2H_{2}O}
\]
これが、アルカリ型燃料電池の全体式である。
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