燃料電池(リン酸型・アルカリ型の仕組み、各極の反応式など)

目次

はじめに

【プロ講師解説】このページでは『燃料電池(リン酸型・アルカリ型の仕組み、原理、各極の反応式など)』について解説しています。


燃料電池とは

  • 水素などの燃料や空気中の酸素を用い、電気エネルギーを得る電池を燃料電池という。
  • 高校化学で登場する主な燃料電池は「リン酸型燃料電池」と「アルカリ型燃料電池」の2種類である。

リン酸型燃料電池

  • リン酸H3PO4水溶液を電解液とする燃料電池をリン酸型燃料電池という。
  • リン酸型燃料電池は車両電源や発電用などとして、数多くの種類が開発された。

リン酸型燃料電池の電池式

  • 先述の通り、リン酸型燃料電池は、リン酸H3PO4水溶液を電解液とする燃料電池である。
  • これを踏まえて、リン酸型燃料電池の電池式は次のように表すことができる。

\[ \mathrm{(-)H_{2}|H_{3}PO_{4}aq|O_{2}(+) }\]

リン酸型燃料電池の仕組み

  • リン酸型燃料電池の仕組みについて、次の3STEPで解説する。

●STEP1
負極で、水素H2が電子eを離して水素イオンHとなる。
●STEP2
放出されたeとHはそれぞれ正極側に伝わっていく。
●STEP3
正極で、酸素O2がこれらと反応し水H2Oが生成する。

STEP
負極で、水素H2が電子eを離して水素イオンHとなる。

余ったH2は外に排出される。

STEP
放出されたeとHはそれぞれ正極側に伝わっていく。

このとき、eが通過することで(電流が発生して)豆電球が点灯していることに注目しよう。

STEP
正極で、酸素O2がこれらと反応し水H2Oが生成する。

余ったO2は外に排出される。

各極における反応

  • リン酸型燃料電池の負極・正極での反応をまとめる。

負極

  • リン酸型燃料電池の負極の反応式は次の通りである。

\[ \mathrm{H_{2} → 2H^{+} + 2e^{-}} \]

  • 水溶液中のH2がeを放出してHとなる。

正極

  • リン酸型燃料電池の正極の反応式は次の通りである。

\[ \mathrm{O_{2} + 4H^{+} + 4e^{-} → 2H_{2}O} \]

  • O2がHとeを受け取りH2Oとなる。

全体

  • リン酸型燃料電池の負極と正極の反応式をまとめて、リン酸型燃料電池全体の反応式をつくる。

\[ \begin{array}{rr}
& \mathrm{H_{2} → 2H^{+} + 2e^{-} ×2}\\
+\big{)}&\mathrm{O_{2} + 4H^{+} + 4e^{-} → 2H_{2}O}\\
\hline
&\mathrm{2H_{2}+O_{2} → 2H_{2}O}
\end{array} \]

  • これが、リン酸型燃料電池の全体式である。電子eの数を合わせて消すために、負極の式を×2していることに注意しよう。

アルカリ型燃料電池

  • 水酸化カリウムKOH水溶液を電解液とする燃料電池をアルカリ型燃料電池という。
  • アルカリ型燃料電池は、アメリカのアポロ宇宙船に搭載されたことで有名である。

アルカリ型燃料電池の電池式

  • 上述の通り、アルカリ型燃料電池は、水酸化カリウムKOH水溶液を電解液とする燃料電池である。
  • これを踏まえて、アルカリ型燃料電池の電池式は次のように表すことができる。

\[ \mathrm{(-)H_{2}|KOHaq|O_{2}(+)} \]

  • 各極の反応が少し複雑なので、負極と正極の反応を別々に確認し、その後まとめる形で解説する。

負極の反応

  • アルカリ型燃料電池の負極の反応について、次の3STEPで解説する。

●STEP1
負極で、水素H2が電子eを離して水素イオンHとなる。
●STEP2
放出されたeとHはそれぞれ正極側に伝わっていく。
●STEP3
KOHから電離したOHがHと反応し、H2Oが生成する。

STEP
負極で、水素H2が電子eを離して水素イオンHとなる。

余ったH2は外に排出される。

STEP
放出されたeとHはそれぞれ正極側に伝わっていく。

このとき、eが通過することで(電流が発生して)豆電球が点灯していることに注目しよう。

STEP
正極で、酸素O2がこれらと反応し水H2Oが生成する。

ちなみに、アルカリ型燃料電池の負極の反応式は、H2からHが生成する式である

\[ \mathrm{H_{2} → 2H^{+} + 2e^{-}} \]

に、(溶液中に存在している)OHを足し合わせれば良い。したがって…

\[ \begin{array}{rr}
& \mathrm{H_{2} → 2H^{+} + 2e^{-} }\\
+\big{)}&\mathrm{+ 2OH^{-} + 2OH^{-}}\\
\hline
&\mathrm{H_{2}+2OH^{-} → 2H_{2}O + 2e^{-}}
\end{array} \]

これがアルカリ型燃料電池の負極の反応式である。

また、生成したH2Oの一部は排出され、残りは電解液中に残される。

正極の反応

  • 次に、アルカリ型燃料電池の正極で起こる反応を確認する。
  • 負極から流れてきたeと上の反応(H2+2OH→2H2O+2e)で発生して電解液中に取り残されていたH2Oが、正極から吹き込まれたO2と反応し、結果としてOHが生成する。
  • 以上を踏まえると、アルカリ型燃料電池の正極の反応式は、次のようになる。

\[ \mathrm{O_{2} + 2H_{2}O + 4e^{-} → 4OH^{-}} \]

アルカリ型燃料電池まとめ

  • アルカリ型燃料電池について、上で解説したことをまとめると、次のようになる。
  • 「真ん中でサイクルが出来ている」ということがポイントである。
  • 正極で使うH2Oを負極が、負極で使うOHを正極がつくり出している。このおかげで、燃料電池は連続的にエネルギーを生み出すことが可能になっている。
  • 最後に、アルカリ型燃料電池の全体式をつくる。正極と負極の反応式をまとめると、次のようになる。

\[ \begin{array}{rr}
& \mathrm{H_{2} + 2OH^{-} → 2H_{2}O + 2e^{-} ×2} \\
+\big{)}&\mathrm{O_{2}+2H_{2}O+4e^{-}→4OH^{-}}\\
\hline
&\mathrm{2H_{2}+O_{2} → 2H_{2}O}
\end{array} \]

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著者情報

元講師、薬剤師、イラストレーター
数百名の中高生向け指導経験あり(過去生徒合格実績:東工大・東北大・筑波大・千葉大・岡山大・早稲田大・慶應義塾大・東京理科大・上智大・明治大など)。
2014年よりwebメディア『化学のグルメ』を運営
公式オンラインストアで販売中の理論化学ドリルシリーズ・有機化学ドリル等を執筆
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