塩の液性(見分け方・演習問題など)

目次

はじめに

【プロ講師解説】このページでは『塩の液性(見分け方・演習問題など)』について解説しています。


塩の液性

  • 塩の種類と液性の関係は次の通りである。
塩の種類液性
強酸+強塩基でつくられた正塩 中性
強酸+強塩基でつくられた酸性塩酸性
強酸+弱塩基でつくられた塩酸性
弱酸+強塩基でつくられた塩塩基性
  • 液性(=塩を水に溶かした水溶液の性質)には「中性」「酸性」「塩基性」の3種類がある。
  • 強酸+強塩基でつくられた正塩を溶かした水溶液の液性は「中性」、強酸+強塩基でつくられた酸性塩を溶かした水溶液の液性は「酸性」、強酸+弱塩基でつくられた塩を溶かした水溶液の液性は「酸性」、弱酸+強塩基でつくられた塩を溶かした水溶液の液性は「塩基性」となる。
  • つまり、塩の液性は元の酸や塩基によって決まるということである。

塩から「由来の酸・塩基」を割り出す

  • 上述の通り、塩を溶かした水溶液の液性はその塩をつくっている酸や塩基によって決まる。定期テストや入試の問題では「塩」をみてパッとその液性を答える必要があり、そのためには塩をみて、その塩が「どんな酸」と「どんな塩基」からできているのかを判断する必要がある。そこでこれから、塩の化学式から「由来の酸・塩基」を割り出す方法について解説する。

●STEP1
塩を陽イオンと陰イオンに分ける。
●STEP2
それらのイオンが含まれる酸・塩基を「酸・塩基一覧表」から探す。

塩化ナトリウムNaCl

STEP
塩を陽イオンと陰イオンに分ける。

まずは、塩NaClを陽イオンNaと陰イオンClに分ける。

\[ \mathrm{NaCl → Na^{+} , Cl^{-}} \]

STEP
それらのイオンが含まれる酸・塩基を「酸・塩基一覧表」から探す。

酸一覧

強酸価数弱酸
HCl(塩化水素)
HBr(臭化水素)
HI(ヨウ化水素)
HNO3(硝酸)
1価HF(フッ化水素)
CH3COOH(酢酸)
H2SO4(硫酸)2価H2CO3(炭酸)
H2S(硫化水素)
H2C2O4(シュウ酸)
3価H3PO4(リン酸)

【塩基】

強塩基価数弱塩基
NaOH(水酸化ナトリウム)1価NH3(アンモニア)
Ca(OH)2(水酸化カルシウム)2価Cu(OH)2(水酸化銅)
Mg(OH)2(水酸化マグネシウム)
Zn(OH)2(水酸化亜鉛)
3価Al(OH)3(水酸化アルミニウム)
Fe(OH)3(水酸化鉄)

ClはHCl、NaはNaOHに含まれている。したがって、NaClは強酸と強塩基からできており、かつ正塩のため、水溶液にしたときの液性は「中性」である。

硫酸水素ナトリウムNaHSO4

STEP
塩を陽イオンと陰イオンに分ける。

まずは、塩NaHSO4を陽イオンNaと陰イオンSO42ーに分ける(間のHは無視する)。

\[ \mathrm{NaHSO_{4} → Na^{+} , SO_{4}^{2-}} \]

STEP
それらのイオンが含まれる酸・塩基を「酸・塩基一覧表」から探す。

酸一覧

強酸価数弱酸
HCl(塩化水素)
HBr(臭化水素)
HI(ヨウ化水素)
HNO3(硝酸)
1価HF(フッ化水素)
CH3COOH(酢酸)
H2SO4(硫酸)2価H2CO3(炭酸)
H2S(硫化水素)
H2C2O4(シュウ酸)
3価H3PO4(リン酸)

【塩基】

強塩基価数弱塩基
NaOH(水酸化ナトリウム)1価NH3(アンモニア)
Ca(OH)2(水酸化カルシウム)2価Cu(OH)2(水酸化銅)
Mg(OH)2(水酸化マグネシウム)
Zn(OH)2(水酸化亜鉛)
3価Al(OH)3(水酸化アルミニウム)
Fe(OH)3(水酸化鉄)

SO42ーはH2SO4、NaはNaOHに含まれている。したがって、NaHSO4は強酸と強塩基からできており、かつ酸性塩のため、水溶液にしたときの液性は「酸性」である。

炭酸水素ナトリウムNaHCO3

STEP
塩を陽イオンと陰イオンに分ける。

まずは、塩NaHCO3を陽イオンNaと陰イオンCO32ーに分ける(間のHは無視する)。

\[ \mathrm{NaHCO_{3} → Na^{+} , CO_{3}^{2-}} \]

STEP
それらのイオンが含まれる酸・塩基を「酸・塩基一覧表」から探す。

酸一覧

強酸価数弱酸
HCl(塩化水素)
HBr(臭化水素)
HI(ヨウ化水素)
HNO3(硝酸)
1価HF(フッ化水素)
CH3COOH(酢酸)
H2SO4(硫酸)2価H2CO3(炭酸)
H2S(硫化水素)
H2C2O4(シュウ酸)
3価H3PO4(リン酸)

【塩基】

強塩基価数弱塩基
NaOH(水酸化ナトリウム)1価NH3(アンモニア)
Ca(OH)2(水酸化カルシウム)2価Cu(OH)2(水酸化銅)
Mg(OH)2(水酸化マグネシウム)
Zn(OH)2(水酸化亜鉛)
3価Al(OH)3(水酸化アルミニウム)
Fe(OH)3(水酸化鉄)

CO32ーはH2CO3、NaはNaOHに含まれている。したがって、NaHCO3は弱酸と強塩基からできているため、水溶液にしたときの液性は「塩基性」である。


塩の液性まとめ

この『塩の液性(見分け方・演習問題など)』のページで解説した内容をまとめる。

  • 塩の種類と液性の関係は次の通りである。
塩の種類液性
強酸+強塩基でつくられた正塩 中性
強酸+強塩基でつくられた酸性塩酸性
強酸+弱塩基でつくられた塩酸性
弱酸+強塩基でつくられた塩塩基性
  • 塩から「由来の酸・塩基」を割り出す方法
    ●STEP1
    塩を陽イオンと陰イオンに分ける。
    ●STEP2
    それらのイオンが含まれる酸・塩基を「酸・塩基一覧表」から探す。

演習問題

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問1

NaClを水に溶かしてできた水溶液の液性を答えよ。

解答/解説:タップで表示

解答:中性

NaClは強酸と強塩基からできており、かつ正塩のため、水溶液にしたときの液性は「中性」である。

問2

NaHSO4を水に溶かしてできた水溶液の液性を答えよ。

解答/解説:タップで表示

解答:酸性

NaHSO4は強酸と強塩基からできており、かつ酸性塩のため、水溶液にしたときの液性は「酸性」である。

問3

NaHCO3を水に溶かしてできた水溶液の液性を答えよ。

解答/解説:タップで表示

解答:塩基性

NaHCO3は弱酸と強塩基からできているため、水溶液にしたときの液性は「塩基性」である。

問4

CuSO4を水に溶かしてできた水溶液の液性を答えよ。

解答/解説:タップで表示

解答:酸性

CuSO4は強酸と弱塩基からできているため、水溶液にしたときの液性は「酸性」である。

問5

Na2SO4を水に溶かしてできた水溶液の液性を答えよ。

解答/解説:タップで表示

解答:中性

Na2SO4は強酸と強塩基からできており、かつ正塩のため、水溶液にしたときの液性は「中性」である。

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著者情報

元講師、薬剤師、イラストレーター
数百名の中高生向け指導経験あり(過去生徒合格実績:東工大・東北大・筑波大・千葉大・岡山大・早稲田大・慶應義塾大・東京理科大・上智大・明治大など)。
2014年よりwebメディア『化学のグルメ』を運営
公式オンラインストアで販売中の理論化学ドリルシリーズ・有機化学ドリル等を執筆
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